焦点面に結像する波面を空間中で再現した位相変調透過板マスク(ビルトインレンズマスク)による新しい三次元フォトリソグラフィの創生とその検証を行った。 投影系で空間中に結像する波面を再現するために、結像面での光強度を逆フーリエ変換することにより、結像面から離れた任意の位置での複素振幅分布(波面)が求められる。これに相当する複素透過率を有するマスクを作製し、光を照射することにより、結像面に任意のパターンを結像することができる。この原理を用いて、所望の三次元構造体を、細かな種(シード)要素に分割し、各要素を結像するための複素振幅波面を要素ごとに算出したのち、これらを重畳して一枚の複素透過板(ビルトインレンズマスクと名付けた)とし、このマスクに従来のフォトリソグラフィと同様の方法で光を照射することにより、レジスト中に三次元の結像構造を焼き付ける三次元フォトリソグラフィを実現しようとした。 ここでの課題の一つは、複素透過率を連続的に変化してマスク作製は不可能であるため、複素透過率を二値化して実際のマスク作製を可能とした。一方で二値化による像の歪が問題となる。また、各シードパターンの複素透過率を重畳させる場合に、相反する位相振幅の場合は情報が喪失するため、同様に干渉等による像の歪が生じる。 このため、マスクの複素振幅分布を最適化するシステムを構築し、三次元結像の状態を計算機解析によって評価した。その結果、立体交差する線パターンでの相互干渉の低減、リングおよびスパイラル状の構造での軸構造発生の抑制などに効果的であることがわかった。 これらを含めて多様な三次元構造の露光現像実験を行った。その結果、ピラミッドのフレーム構造など単純に傾斜し、立体的な交差のない構造では三次元構造が得られたが、スパイラルなどの立体交差を含む構造では、シード間の干渉が抑えきれず、構造が破断する欠陥が生じた。
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