今年度は、レーザー誘起表面凹凸形成法を含むレーザープロセスを用いたランダムレーザー作製技術に関する研究をまとめ、洋書「High-Energy Chemistry and Processing in Liquids(第6章担当)」を出版した。また、磁場応答以外の外部刺激応答についても研究を進め、レーザー加熱によるVO2の絶縁体―金属相転移を利用したランダムレーザーのスイッチング動作についても研究を進めた。昨年度の実験では、ZnOナノ粒子膜にVO2粒子を分散させた試料を用意し、励起用のUVパルスレーザーに加え、VO2を加熱するための青色CWレーザー(5 mW)を同時照射すると、ランダムレーザー発振が急激に抑制される様子を確認した。しかし、試料温度などの情報は得られておらず、相転移による現象かどうかも定かではなかった。そこで同じ試料をヒーター加熱し、測定を行ったところ、同様な現象が40~45℃付近で誘起されることを確認した。また、レーザー光吸収による1個のVO2粒子の温度を見積った結果、50℃付近となることがわかり、加熱によりレーザー発振に変化が現れる温度と良い一致を示すことを確認した。さらに表面凹凸ランダムレーザーの新規な作製方法として、GaN基板直上にMoワイヤを配置したプラズマエッチングを行い、プラズマで飛ばされた少量のMoがGaN上に部分的に堆積することでMoが浸食を防ぐマスクとして機能し、ナノメートルサイズの複雑な凹凸構造が形成され、紫外ランダムレーザー発振が誘起されることを示した。プラズマ照射条件の最適化により低しきい値化が可能となるだけでなく、試料上に配置するワイヤ材料を磁性体や他の半導体に変えることで、外部変調可能なランダムレーザーや電気駆動可能なランダムレーザーを少ない工程で大面積に作製できる可能性を示した。
|