研究実績の概要 |
本研究は、フラーレン分子数個の相互作用によるナノ接合の状態制御とそれを原理とするNMES(ナノ材料エレクトロシステム)素子のメカニズムの解明を目的とする。計画に従い研究を実施し、下記の研究成果を得た。 ① 電子ビーム照射によりC60ナノワイヤーの導電性を大幅に向上することを見いだし、C60ナノワイヤ素子の導電性改善技術を開発した。素子の導電性が改善することにより、作製したC60素子のほぼすべてで抵抗スイッチ現象が発現するようになった。この成果より、大量の素子を評価することが可能となり、C60素子の抵抗変化機構が重合・脱重合に基づくことを明らかにした。この可逆的な抵抗変化現象は、金属の2端子抵抗変化素子に比べ、抵抗変化のばらつきの少ないことも確認された。以上の成果をまとめ、海外学術誌に投稿した。Y. Umeta, H Suga, et. al., "C60-Nanowire Two-State Resistance Switching Based on Fullerene Polymerization/Depolymerization", ACS Applied Nano Materials 2021 4, 820. ② Lu3Nを内包させたC80分子をLiquid-Liquid Interface Precipitation法により繊維状材料にする手法を確立した。また、そのC80ナノワイヤ材料をシリコン基板上に展開し、真空蒸着法により電極作製をすることでNMES素子を作製し,その電気特性を調べた.内包金属の影響によりC60素子よりも導電性が大幅に改善することが明らかになった。前記の電子線照射なしでも、良好な導電性を得られることが明らかになり、これは内包分子の影響と考えられる。今後、電流変化を系統的に調べることでそのメカニズムを明らかにする。
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