研究課題/領域番号 |
20K05296
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
窪田 崇秀 東北大学, 工学研究科, 特任准教授 (00580341)
|
研究分担者 |
小田 洋平 福島工業高等専門学校, 一般教科, 准教授 (80751875)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | スピントロニクス / ホイスラー合金 / 磁気異方性 / スピン軌道トルク / 異常ホール効果 |
研究実績の概要 |
本課題では、これまでの研究において広く研究されてきたフルホイスラー合金と比較して結晶格子の対称性が低い逆ホイスラー合金を研究対象とする。逆ホイス ラー合金においては、対称性の低下に伴う空間反転対称性の破れによる磁気誘導型のスピン軌道トルクの発現等、スピン軌道相互作用に依存した伝導現象に興味 がもたれる。 逆ホイスラー合金における結晶格子のひずみとスピン軌道相互作用に依存した伝導現象(異方性磁気抵抗、異常ホール効果、スピン軌道トルク)との関係を明らかにすることを目指し、2021年度は、実験における伝導現象測定に適した薄膜試料作製条件の最適化を継続して実施した。 試料作製では、Mn2CoGa薄膜をMgO(100)、SrTiO3(100)の各単結晶基板上に膜厚、成膜時加熱温度をパラメータとして成膜し、その結晶構造と磁気特性を明らかにした。その結果、MgO基板とSrTiO3基板を用いることで、系統的に格子ひずみと磁気異方性を制御できることを改めて実証した。加えて、昨年までの実験では膜厚一桁ナノメートルの領域では、表面平坦性が悪く、伝導評価に適さない試料しか作製出来ないという課題があったが、成膜温度、成膜後熱処理温度の最適化により、薄膜領域でも伝導特性評価が可能な試料を得ることに成功した。加えて、一部の試料についてスピン軌道トルクの測定を行い、Mn2CoGa単層薄膜において、電流起因の有効磁場の測定に成功した。 理論検討に関しては、Mn2CoGaの不規則相における磁気異方性と歪の関係性について検討を行い、不規則化が起こった場合にも実験で観測された磁気異方性と格子歪の間の正の相関関係が得られることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標の一つで合った結晶格子のひずみと磁気異方性の関係性については、再現性の確認を含め十分な実験結果が得られた。また、理論検討においても実験と整合する計算結果が得られたと共に、電子論的な考察においても一定の結論に到達することが出来たことから、順調に進展したと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、実験ではスピン軌道トルクの定量評価に注力する。組成や膜厚の異なる試料を系統的に評価する。また、理論検討も並行して実施し、Mn2CoGa単層薄膜試料におけるスピン軌道トルクについてその物理的起源の考察を深める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で旅費の支出が当初予定を下回った。次年度使用額分を利用して計測機器の高度化、材料費への追加支出を行い、研究の一層の進捗を図る。
|