本課題では、これまでの研究において広く研究されてきたフルホイスラー合金と比較して結晶格子の対称性が低い逆ホイスラー合金を研究対象とする。逆ホイスラー合金においては、対称性の低下に伴う空間反転対称性の破れによる磁気誘導型のスピン軌道トルクの発現等、スピン軌道相互作用に依存した伝導現象に興味がもたれる。 逆ホイスラー合金における結晶格子のひずみとスピン軌道相互作用に依存した伝導現象(異方性磁気抵抗、異常ホール効果、スピン軌道トルク)との関係を明らかにすることを目指し、2022年度は、逆ホイスラー合金薄膜におけるスピン軌道相互作用に起因した伝導特性評価を実施した。 試料作製では、Mn2CoGa薄膜をMgO(100)並びにSrTiO3(100)の各単結晶基板上に膜厚、成膜時加熱温度と成膜後の熱処理温度をパラメータとして成膜し、結晶の格子ひずみと長距離規則度とを制御した。規則度制御において、特にSrTiO3(100)基板を用いる場合は、加熱温度が高温の場合酸素脱離等によって基板が導電性を保持する場合がある。そのため、緻密に温度条件の検討を実施した。 作製した試料について、異常ホール効果およびスピン軌道トルクの測定を行い、Mn2CoGa単層薄膜において、電流起因の有効磁場の測定に成功した。また、観測されたスピン軌道トルクの大きさについて、格子ひずみとの関連を精査した。 理論検討に関しては、Mn2CoGaの不規則相における磁気異方性と歪の関係性について検討を前年度に続き実施した。
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