研究課題
反強磁性体の持つ様々な特徴を応用したスピントロニクスは反強磁性スピントロニクスと呼ばれ、近年精力的に研究されている。本研究では、新規反強磁性スピントロニクス物質の開拓を目指した研究を行っており、2020,2021年度で以下の研究成果を得ている。(1)磁性ワイル半金属Co3Sn2S2のホールドープ物質Co3InxSn2-xS2の示す異常輸送現象の起源を明らかにした。(2)対称性の考察と有効模型を用いたアプローチに基づき、非共線・非鏡面磁性体において、スピン軌道相互作用によらない反対称スピン分裂、非対称バンドシフトが生じることを系統的に示した。(3)多極子展開に基づく磁気構造生成法を単位胞間に空間変調をもつ磁気構造へ適用可能な形式へ拡張した。この手法を反強磁性体α-Mn、及びCoTM3S6 (TM=Nb, Ta)へ適用し、これらの物質が示す異常ホール効果の起源となりうる磁気構造の候補を提案した。(4)ディラック半金属の候補物質である反強磁性体CuMnAsのスピンホール伝導度を第一原理計算によって解析し、スピンホール伝導度テンソルに顕著な非対称性が生じることを明らかにした。(5)新規スピン流生成の候補物質である反強磁性体NiF2などのスピン伝導度を第一原理計算に基づいて解析した。これらの研究成果に加え、2022年度は次のような成果を得た。(6)反強磁性体LaMnSiの電子構造と磁気的性質を第一原理計算によって評価し、電子構造が反強磁性秩序に伴って非対称に変形することを示した。(7)圧力による磁化誘起現象であるピエゾ磁気効果について、Mn系の反強磁性体を対象として第一原理計算による定量的評価を推進した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
Physical Review B
巻: 107 ページ: 014407/1-15
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固体物理
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