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2021 年度 実施状況報告書

反強磁性超薄膜における磁気異方性の能動的制御法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 20K05302
研究機関名古屋工業大学

研究代表者

壬生 攻  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40222327)

研究分担者 田中 雅章  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50508405)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード反強磁性体 / 超薄膜 / 磁気異方性 / スピントロニクス / メスバウアー分光
研究実績の概要

本研究課題は,物質中で原子がもつ磁気モーメントの方向が打ち消し合っている「反強磁性体」を,より「能動的な」磁性材料にするため,反強磁性超薄膜の「磁気異方性」(原子磁気モーメントの方向)を,外的刺激により制御することを目的とするものである。今年度は昨年度に引き続き,代表的な反強磁性物質であるヘマタイトの薄膜を対象とし,磁気異方性に対する異種元素ドーピング,膜厚制御,エピタキシャル歪みなどの静的変調の影響を系統的に調べるとともに,重金属ドープヘマタイト薄膜の室温付近での磁気異方性を電圧印加(外的刺激)によって動的に制御する実験を試みた。これらの過程で,研究代表者の強みであり,原子核によるガンマ線の共鳴吸収スペクトルを通じて反強磁性体の局所的磁気モーメントの方向がわかる「メスバウアー分光法」を駆使するとともに,より簡便な電気伝導測定を通じた反強磁性磁気モーメントの方向の検出方法の確立を目指した。後者においては,絶縁体であるヘマタイト薄膜の上部に蒸着したプラチナ薄膜の「スピンホール磁気抵抗効果」を面内印加磁場の方向を変えながら測定することが有効であることが示された。今年度は新たに,リチウム化合物薄膜と積層化したヘマタイト薄膜の電圧印加実験を行ない,原子磁気モーメントの方向変化を示す「モーリン転移」の転移温度が,電圧印加によりわずかに変化していることを裏付けるデータを得ることに成功した。以上の成果は,新たに共著の解説論文として国内専門誌に公表されるとともに,国際学会で 1 件,国内学会・研究会で 3 件の発表に結びついている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

反強磁性ヘマタイト薄膜の磁気異方性に対する静的変調の研究は,順調に進んでいる。温度上昇とともに原子磁気モーメントの方向が膜面垂直方向から面内方向に転移する温度(モーリン転移温度)が,異種元素ドーピングや膜厚に対してどのように変化するか,系統性なデータが蓄積されつつある。また,反強磁性超薄膜の磁気異方性の検出法として,メスバウアー分光法とスピンホール磁気抵抗効果を相補的に用いる方法の開発も順調に進んでいる。電圧印加による磁気異方性の動的制御の研究では,昨年度まで,電圧印加に伴う重金属ドープヘマタイト薄膜の磁気異方性の変化が明確に観測されるには至っていなかったが,今年度新たに,リチウム化合物薄膜と積層化したヘマタイと薄膜の電圧印加実験に取り組んだ。その結果,モーリン転移温度が電圧印加によりわずかに変化している兆候を示すデータ,すなわち,電圧に駆動されたリチウムイオンによりヘマタイト薄膜の磁気異方性が変化していることを示唆するデータが得られ,今後の進展が待たれる結果となっている。

今後の研究の推進方策

引き続き,重金属ドープヘマタイト薄膜の磁気異方性の動的制御の実現に挑戦していく。具体的には,電圧印加やスピン流注入による室温付近での反強磁性磁気モーメントの方向の制御に挑む。一連の実験において,放射光を光源としたメスバウアー分光法を含めたメスバウアー分光法とスピンホール磁気抵抗効果の測定を相補的に活用していく。とりわけ,今年度兆候をつかむことが出来た,リチウム化合物薄膜と積層化した試料の電圧印加実験を推進する。さらに,反強磁性層と強磁性層を磁気結合させたヘテロ接合素子において,反強磁性層を介した強磁性層の磁化方向の切り替えを試み,磁気記録素子やスピントニクス素子としての展開の可能性を追求してゆく。また,他の反強磁性物質についても同様の現象を調査し,ヘテロ接合した強磁性薄膜層の磁化方向を,反強磁性層の磁気異方性の動的制御を通じて制御するなど,これまでにない新しいコンセプトの磁化制御法を確立し,磁気記録やスピントロニクスの新素子としての展開を図っていく。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 放射光で観たスピントロニクスの材料と物性(Spintronic Materials and Their Properties Investigated by Synchrotron Radiation)2022

    • 著者名/発表者名
      小野輝男,岡本聡,千葉大地,水口将輝,壬生攻(ONO Teruo、OKAMOTO Satoshi、CHIBA Daichi、MIZUGUCHI Masaki、MIBU Ko)
    • 雑誌名

      表面と真空(Vacuum and Surface Science)

      巻: 65 ページ: 218~223

    • DOI

      10.1380/vss.65.218

    • 査読あり
  • [学会発表] 放射光メスバウアー分光法のさまざまな応用 - 放射性同位体線源 vs. 放射光 -2022

    • 著者名/発表者名
      壬生攻
    • 学会等名
      第15回SPRUC核共鳴散乱研究会
  • [学会発表] スピネル構造を持つ強磁性電極を用いたコバルトフェライト薄膜のトンネル型スピンフィルター効果の評価2022

    • 著者名/発表者名
      市川知幸,古田元春,森下雅也,眞下大輔,田中雅章,壬生攻
    • 学会等名
      IEEE Magnetics Society 名古屋支部若手研究会
  • [学会発表] Mossbauer Spectroscopic Studies on Antiferromagnetic Thin Films for Spintronics Applications2021

    • 著者名/発表者名
      K. Mibu
    • 学会等名
      International Conference on the Applications of the Mossbauer Effect 2021
    • 国際学会
  • [学会発表] 不純物をドープしたヘマタイト薄膜のモーリン転移のスピンホール磁気抵抗効果による検出2021

    • 著者名/発表者名
      田中雅章,横山幸季,石井千森,藤井一樹,古田旭宏,壬生攻
    • 学会等名
      第45回日本磁気学会学術講演会
  • [備考] 壬生・田中研究室 研究紹介

    • URL

      http://mibulab.web.nitech.ac.jp/research/

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公開日: 2022-12-28  

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