研究課題/領域番号 |
20K05306
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
加瀬 直樹 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 助教 (10613630)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 単結晶 / 透明酸化物半導体 |
研究実績の概要 |
ホモロガス構造を有する透明酸化物半導体(InGaO3)m(ZnO)n (以下IGZO-mnと表記)の大型単結晶の育成とその物性測定を行った。高大気圧下におけるFloating Zone法によって、昨年度末の段階でn = 1, 2, 3の育成に成功していたが、単結晶の育成条件を変化させることでIGZO-12のより純度の高い単結晶の大型化に成功した。 育成に成功した単結晶試料を用いて各種物性測定を行った。酸素アニールした単結晶は電極作成が困難になるが、金蒸着および金ペーストを使用し接触抵抗を可能な限り低減することで電気伝導特性の測定が可能になった。酸素アニールした試料の電気伝導度はIGZO-11よりもIGZO-13の方が1桁程度低くなり、酸素アニールに対してより大きな影響を受けた。ホール効果の測定からキャリア密度を見積もり、それぞれの移動度を算出した。移動度の値はn(ZnO層の枚数)に依存しているように見え、移動度のキャリア密度依存性にはnの違いによる系統的な変化が見られた。面内と面間方向の電気伝導度の異方性を測定したがキャリア密度の違いによる変化を考慮できていないため、伝導異方性のnの依存性は正確には判断できていない。 これらの化合物のエネルギーギャップを光学測定から算出するとIGZO-11が最も大きくなりnが増えるにつれて減少した。これは過去の多結晶試料のギャップ値の振る舞いと一致しており、またその値も非常に良い一致を示した。さらにゼーベック係数の測定を行った結果、その値はキャリア密度に依存しておりnの違いによる変化は大きくはないことを確認した。 また(InGaO3)m(ZnO)nの単結晶育成に関するInvited Review Paperを作成し、年度末の段階で査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究室内で物性測定を行うための研究環境の整備が進んだため、外部施設を使用しなくても各種物性測定が可能になった。移動度や熱物性測定を行いnの違いによる物性の変化を徐々に明らかにすることができている。また、IGZOの単結晶育成に関するInvited Review paperを作成し、実験・論文投稿の面からも進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
ホモロガス構造(InGaO3)m(ZnO)nのnが偶数か奇数かで空間群が異なるため、物性を比較するためには最低でもn = 4までの 大型単結晶が必要である。昨年度指摘した高出力を出せるFZ炉の問題点の改善はまだ終了していないが、整備を進めた結果そのFZ炉を用いた高大気雰囲気下における単結晶育成環境を整えることができた。そのため本格的にn = 4の単結晶育成を行う。 これまでに育成した試料の熱伝導率を測定して熱電性能を明らかにする。さらに比熱測定を行う予定である。半導体の低温測定は基本的に困難であるが我々が作成した精密比熱測定装置では高精度な測定が可能である。そのため半導体でも詳細な電子比熱などの情報が得られるはずである。また全置換物質を含めた様々なIGZO関連の大型単結晶を育成することで高移動度の起源の解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を検討していた装置の価格が想定以上になり、また研究を進める上で装置の重要性が遷移した。そのため購入装置を変更したため次年度使用額が生じている。
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