研究課題/領域番号 |
20K05309
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
水戸 慎一郎 東京工業高等専門学校, 電子工学科, 准教授 (10637268)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 物理乱数生成 / 磁気光学効果 / 磁性ガーネット |
研究実績の概要 |
磁気光学効果を用いた乱数生成器の実現を目的として,乱数生成に適した磁気光学材料,データ処理手法,ハードウェア構成について検討を行った.磁気光学材料の開発では,液相エピタキシー法を用いて,ホルミウム鉄ガーネット,およびビスマス置換ホルミウムガーネットを作製して乱数生成への応用を試みた.ホルミウム鉄ガーネットでは,当初想定していたメイズ状磁区ではなく,バブル状磁区を得たが,バブル状磁区でも統計的に均一な乱数が得られるという新たな知見を得た.また,スパッタリング法を用いてビスマス高濃度置換イットリウム鉄ガーネット膜を作製し,乱数生成への適性を調べたところ,乱数生成が可能であることが明らかになった.以上の結果より,多様な磁区形状から乱数生成が可能であること,および磁区サイズ等によって乱数生成に使えるデータの生成効率に違いが現れることがわかった.乱数生成のためのデータ処理手法として,新たににビットシフトの適用を行った.適切なシフト量を設定することで乱数検定で課題になることが多かったFFTの成績が向上し,検定の合格率が向上した.メイズ磁区を用いた乱数生成にビットシフトを組み合わせることで検定合格率は80%を超え,乱数として利用可能な性能を満たすことができた.ハードウェア構成として,CMOSイメージセンサ上に偏光子と磁気光学膜を積層した一体型デバイスを試作した.原理実証に用いた光学系の全長が約30cmであることに対し,試作したデバイスでは1cm程度の厚みでも磁区パターンの取得に成功した. 以上の成果を,電子情報通信学会CPM研究会で発表した.2021年度には国際学会で報告する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
乱数生成に適した磁気光学材料の検討では,メイズ磁区以外の磁区でも乱数生成が可能であることが明らかになり,磁区の形状とサイズの両面で乱数生成の性能を高めていけることがわかった.これは,当初予定していた磁区幅の最適化を超える成果である.また,データ処理では,ビットシフトにより乱数検定の合格率が80%を超え,乱数として実用可能な性能を計画より前倒しで実現できた.
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今後の研究の推進方策 |
乱数生成に適した磁気光学材料について,液相エピタキシー法を用いてイッテルビウム置換テルビウム鉄ガーネットをベースとして,磁区形状,磁区サイズ,磁化特性の最適化を行う.乱数生成アルゴリズムはほぼ明らかになったため,FPGAを用いた高速化,および光学的ランダマイズ処理の検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の使用状況等により僅かな残額が生じた.実験用試薬等に用いる.
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