本研究は、メイズ磁区構造をもつ単結晶磁性ガーネット膜と、高画素高速度イメージセンサを構成部材とする、スマートフォンに搭載できるほど小型で高速な真正乱数生成器の実現と、これに適した単結晶磁性ガーネット膜の探索を行うものである。 乱数生成に適した単結晶磁性ガーネット膜の特性と作成方法について、液相エピタキシー装置を作製して探査を行った。イメージセンサの画素数を乱数生成に活かすには、センサのピクセルサイズと磁区のサイズを合わせる必要があるが、このような観点での材料開発はこれまで例がなかったが、本研究により磁区サイズの調整手法を明らかにした。また、当初はイメージセンサとのピクセルマッチングが重要だと考えていたが、実際に複数の磁区サイズについて検討したところ、実光学系でのデフォーカスまで考慮して最適な磁区サイズを決定した方が良いことが新たに明らかになった。 上記条件探査により作製した膜の磁区形状を、偏光顕微鏡光学系で取得し、効率よく高品質な乱数を生み出すためのデータ処理方法を検討した。乱数検定(NICT SP800-22)に合格する高品質な乱数を、様々なサイズの磁区形状から効率的に生み出すアルゴリズムを明らかにすることができた。 上記成果を活かし、市販の小型イメージセンサを用いた小型(30mm×30mm×10mm)の乱数生成器と、高画素のイメージセンサを用いた高速型の乱数生成器を試作した。高速型磁気光学乱数生成器では、1Gbit/sを超える乱数生成速度を達成できており、本研究が目指すスマートフォンに搭載できるほどの小型で高速な申請乱数生成器を本方式で実現できることを実証できた。
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