研究課題/領域番号 |
20K05311
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栂 裕太 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (70641231)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 保磁力 / エネルギーランドスケープ |
研究実績の概要 |
磁化反転は準安定状態から安定状態への確率的な遷移であるため、自由エネルギーランドスケープの観点から保磁力を捉え直す試みを進めている。 多結晶磁石材料解析のためのマルチグレイン・モデル構築のための必要な要素として,(a)孤立粒子を念頭にしたスピンモデルの自由エネルギーランドスケープ解析、(b)孤立粒子間の相関効果の導入、の2つを考えていく必要がある。 当該年度では、(a)についてはレプリカ交換Wang-Landau MC法による1000-3000並列程度の高効率な並列化計算の方法論を確立しつつ,孤立粒子における磁化反転核の形成機構をエネルギーランドスケープの観点からの解析を進めた。反転核サイズと磁壁幅との関係性について直接的に調べるとともに、反転核サイズが外部磁場強度によらず一定になる様子を示し、実験事実の定量的な説明を可能とした。 (b)については、考慮すべき項として磁気双極子相互作用がある。従来広く用いられている高速フーリエ変換をもちいた長距離相互作用の高速計算技法は、Nd2Fe14Bに代表される希土類磁石材料ではその対称性の悪さから計算効率がよくない。そのため、長距離相互作用を複雑な結晶構造にも適用可能で、O(NlogN)の計算速度で近似なしに取り扱う方法として、修正確率的カットオフ法を採用した。これを自由エネルギーランドスケープ計算に導入することで、磁気双極子相互作用を考慮に入れた保磁力の有限温度解析を可能とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1).相互作用のない多数の孤立粒子における自由エネルギーランドスケープ計算手法の実装、(2)粒界相を磁石相で挟んだ三相モデルでのシミュレーション、(3)孤立粒子間への磁気双極子相互作用の導入、を進めることでマルチグレインモデル構築のための知見と問題点の洗い出しを進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスによる国内・海外出張の抑制のための旅費の利用料減額によって次年度使用額が生じている。開催延期となった国際会議等への参加費等へ利用をもって使用計画としている。
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