研究課題/領域番号 |
20K05314
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
馬渡 康徳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (70358068)
|
研究分担者 |
東 陽一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (70801059)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 超伝導工学 / メゾ・スケール / 数理的研究 / 臨界電流 / 超伝導薄膜 / ジョセフソン接合 |
研究実績の概要 |
本研究では、メゾ・スケール(nm~μm)領域における超伝導工学に関する研究開発に有効な London 方程式および Ginzburg-Landau 方程式等を基にした理論・シミュレーション研究に関して、数理的研究手法を導入することにより、メゾ・スケール超伝導工学を飛躍的に発展させることを目的とする。本年度は、次の二つのテーマ(1)および(2)について研究を行った。 (1)「平行磁場中の超伝導薄膜における非対称臨界電流」超伝導体に流す電流の方向を反転したときに臨界電流が異なる非対称性が報告されており、平行磁場中の超伝導薄膜における非対称臨界電流の機構の可能性として、超伝導層の表面状態の違い(基板との界面と外部空間と接する表面とで超電導特性や表面粗さが異なる不均一性)が検討されている。本研究では、表面状態の違いを磁場侵入長の不均一性としてモデル化し、量子化磁束線の分布と安定性について London model により理論解析を行った。表面バリアによる臨界電流の理論表式を導き、超伝導膜の一方の面付近と他方の面付近とで磁場侵入長が異なる場合に、臨界電流に非対称性が現れることを示した。 (2)「Josephson 接合の臨界電流における特異な磁気干渉」面状のジョセフソン接合に平行磁場を印加したとき、臨界電流の磁場依存性に Fraunhofer 型の干渉パターンが現れることが知られているが、垂直あるいは斜め磁場中の振舞については系統的な研究例が少ない。本研究では、Ginzburg-Landau 方程式を基に面状接合におけるゲージ不変位相差と平行および垂直磁場との関連について考察し、2枚の超伝導ストリップを十字形に重ねた面状 Josephson 接合に斜め磁場を印加した場合の臨界電流について理論解析を行った。その結果、臨界電流の磁場依存性に特異な干渉パターンが現れることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メゾ・スケール超伝導工学に関する2つの研究テーマについて数理的研究を行い、(1)「平行磁場中の超伝導薄膜における非対称臨界電流」について、磁場侵入長の不均一性により表面バリアによる臨界電流に非対称性が現れることを理論的に示し、(2)「Josephson 接合の臨界電流における特異な磁気干渉」について、斜め磁場中の十字形接合における臨界電流に特異な磁気干渉パターンが現れることを理論的に明らかにした。それぞれの成果について学会発表を行い、本研究課題は概ね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)「平行磁場中の超伝導薄膜における非対称臨界電流」については、理論結果が妥当かどうか、実験データとの比較検討を行う必要がある。 (2)「Josephson 接合の臨界電流における特異な磁気干渉」について、接合面での電流分布について考察することにより特異な磁気干渉パターンの機構解明を行うとともに、接合の幾何学的形状や局所的電流注入の効果などについて理論的に考察し、研究を発展させる。さらに、トポロジカル物質を挟んだ接合においてエッジ状態を反映した特異な磁気干渉が観測されているが、そのような報告と本研究との関連についても調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた出張が不可能になったため、出張旅費を次年度へ繰り越すことにした。次年度に可能であれば出張旅費として支出する予定である。
|