研究実績の概要 |
Pd(001)超薄膜が強磁性を発現すると報告した慶應大グループと同様の手法でPdの成膜を様々な条件で行ったが、我々の装置ではエピタキシャル成長したPd膜は得られなかった。STO(001)基板上にPd (001)、Pd(111)微粒子を形成し、スピン偏極STM(SP-STM)でその磁性を評価したが、強磁性を示す有意な結果は得られなかった。Kirschner等はCu(001)基板上にPd(001)エピタキシャル膜を作製し、Pd膜内に量子井戸状態が形成することを報告している(Phys. Rev. B 73, 035429 (2006))。これを参考にCu(001)基板上に原子レベルで平坦なテラスとステップで構成されたPd(001)エピタキシャル膜が形成していることをSTMで確認し、微分コンダクタンスdI/dVのバイアス電圧依存性よりPd膜厚内に量子井戸状態が形成されていると結論した。さらにCr多結晶磁性探針を使用して、フェルミ面での状態密度が大きくなることが期待できる8、9 MLのPd(001)超薄膜の磁性を室温で評価した。得られたdI/dV像の平坦なテラス内に明暗のコントラストが得られた。これは多磁区構造を取る磁性薄膜のスピン像と解釈できるが、Pdが強磁性を発現していると結論づけるには、さらにデータの蓄積を必要である。上記のPd微粒子の成果とSTO(001)に形成される再構成面の成果を日本物理学会2023年秋季大会で報告した。また、Cu(001)上のPd(001)超薄膜の成果は北海道大学理学院物性物理学専攻の修士論文「スピン偏極走査トンネル顕微鏡を用いたCu(100)基板上のPd薄膜の研究」にまとめた。
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