研究課題/領域番号 |
20K05318
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
白井 肇 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30206271)
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研究分担者 |
花尻 達郎 東洋大学, 理工学部, 教授 (30266994)
石川 良 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90708778)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多接合太陽電池 / 結晶Si / ペロブスカイト / モノリシック多接合素子 / 表面処理 / 3接合素子 |
研究実績の概要 |
先行研究で塗布型結晶Si/導電性高分子PEDOT:PSS接合素子で14-15%の効率を達成し、接合特性が主にp+n接合で説明できることを明らかにしている。並行して上部素子のペロブスカイト薄膜素子では、ルイス酸塩基のセミチオカルカルバジドによる結晶核密度制御に基づいたμmレベルの大粒径・高結晶性ペロブスカイト薄膜の作製および疎水性フッ化アミンによる表面処理を併用することで20.4%を超える変換効率を達成している。そこでモノリシックな接合素子の作製に取り組み、前年度までに1.6V以上の高電圧化を検討した結果1.55Vまでの開放電圧の増大に成功した。 本年度は3接合素子による更なる高電圧化を実現するためバンドギャップの異なるペロブスカイト薄膜の作製およびペロブスカイト薄膜素子による2接合化を検討した。主に高光導電性を維持したままペロブスカイト薄膜のバンドギャップ制御と中間電極の部材・プロセス開発を検討した。ペロブスカイト薄膜素子上部素子・中部素子に利用するバンドギャップについては1.7eV 1.35eVのバンドギャップの制御に成功し、それぞれのペロブスカイト単一素子での素子性能については十分な素子性能が得られている。しかし上部・下部素子を接合させた際の電流ー電圧特性については十分な整流性が得られていない。また中間電極としてスパッタ法で作製したIZO上に上部素子としてスピンコートでSnO2/FACsPbI3/Spiro/InZnO/Ag 構造の形成を検討した。この際InZnO薄膜上にスピンコートでSnO2を塗布した際に下地のIZOを侵食していることが判明した。そこで極薄SnO2をスパッタで成膜し、その後スピンコート法でSnO2を成膜する2段階法で成膜した結果効率12%、短絡電流密度:22mA/cm2を得た。上記の結果を基に最終年度は下部素子、上部素子における多接合化に取り組むことを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ペロブスカイト薄膜2接合素子のための下部・上部ペロブスカイト薄膜についてはバンドギャップ制御(1.7eV, 1.35eV)に成功していることから、3接合素子形成のための下部・中部・上部素子発電層のバンドギャップ制御および下部・上部の単一素子の性能は期待した性能を得ている。しかし中間電極となる部材の選択とそのプロセス技術については更なる検討が必要となるため。
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今後の研究の推進方策 |
塗布型結晶Si/PEDOT:PSS素子、ペロブスカイト薄膜単体の素子性能は、当初の目標値をほぼ達成していることから、残る課題は中間電極部材の選択と接合技術の改善にある。最上部・中間部素子の素子の電流-電圧特性の整流性について電子輸送層の材料および接合特性の改善を継続的に行う。現在塗布法と並行してスパッタ法、蒸着も導入して金属、金属酸化膜の選択と膜厚制御および各素子での電流整合も併せて検討し、多接合素子の性能向上について実験を推進する。特に接合部におけるバンドの連続性を紫外分光、ケルビンプローブおよびX線光電子分光法より詳細に検討し、モノリシックな接合特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗費に関して別途民間財団および企業との共同研究経費から一部支出したため、使途額が当初の計画より少ない経費で対応することが可能であった。最終年度は研究目的の遂行のために消耗品の出費が前年度より多くなることが予想されるため、繰越金に加えて最終年度の経費で基板材料、化学薬品などの消耗品費に充てることを予定している。
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