研究課題/領域番号 |
20K05318
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
白井 肇 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30206271)
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研究分担者 |
花尻 達郎 東洋大学, 理工学部, 教授 (30266994)
石川 良 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90708778)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シリコン太陽電池 / ペロブスカイト太陽電池 / タンデム構造素子 / 開放電圧 / 中間電極 / 金属酸化膜 |
研究実績の概要 |
塗布型結晶Si/導電性高分子PEDOT:PSS太陽電池を下部素子、FACsPbI3ペロブスカイト素子を上部素子とした2接合太陽電池の中間電極の探索とFACsPbI3短接合素子の高効率化に取り組んできた。前者の中間電極部材の探索では、導電性高分子PEDOT:PSS上に溶液法によるペロブスカイト素子の電子輸送層としてPEDOT:PSS上にMoO3/極薄Au/InZnOの3層積層構造を形成後スパッタ法により極薄SnO2とSnCl2・2H2Oからの溶液法を併用する2段階製膜を行うことで再現性に富んだn-Si/FACsPbi3モノリシック2接合素子の作製に成功した。具体的には平坦化Si上に半透明FA0.9Cs0.1PbI3素子構造で性能(12.9%)および開放電圧の増大(1.49V)を実現した。溶液プロセスを主体としたn-Si/ペロブスカイトモノリシック素子のプロセスを開発した。更にFACsPbI3を基軸にI/Br比の調整によるバンドギャップ制御、単一素子性能の向上のための電子輸送層、表面終端化について検討した。具体的にはI/Br比の調整により1.55-1.75eVまでのバンドギャップ制御に成功した。しかしX線回折ではPbI2の回折ピークが残留し、FACsPbIBr単層の形成には至らなかった。しかしFACsPbIBr単一素子で12.7%の性能を得た。そこでFACsPbI3/FACsPbIBr接合素子の形成を先のMoO3/Au/IZO構造を利用してペロブスカイトタンデム素子の作製を試みた。現状で開放電圧は1.5Vまで増大したが効率は3-4%であった。今後ペロブスカイト素子の多接合化のためのペロブスカイト上の正孔輸送層として用いたPTAA上のMoO3/Au/IZO中間電極界面の分析、上部素子および下部Si素子裏面の終端化・テクスチャー構造併用することでより一層の高効率化が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究題目は(n-Si/pロブスカイト)/ペロブスカイト3接合素子の作製を最終目標としている。そのため3接合素子の作製まで至らなったことから上記の区分と判断した。しかし当該研究で実施してきた塗布プロセスによるn-Si/ペロブスカイトモノリシック素子の性能に対する再現性が担保できたこと。ペロブスカイト単一素子のI/Br比の調整によるバンドギャップ制御および単一素子性能が5-6%得られたことについては今後につながる成果と考えている。バンドギャップの異なるペロブスカイト素子の中間電極に対して、耐熱性の向上が期待されるPTAA上のMoO3/Au/IZO上のFACsPbIBr系素子の性能および電流マッチングのための膜厚の制御においてなお多くの取り組むべき課題を残している。
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今後の研究の推進方策 |
結晶Si/FACsPbI3素子性能についてはMoO3/極薄Au/IZO積層構造とその膜厚を最適化することで再現性の向上に成功した。しかしFACsPbI3/FACsPbIBr接合素子の形成を先のMoO3/Au/IZO構造を利用してペロブスカイトタンデム素子の作製を試みた。現状で開放電圧は1.5Vまで増大したが効率は3-4%であった。そこでペロブスカイト素子の多接合化のためのペロブスカイト上の正孔輸送層として用いたPTAA上のMoO3/Au/IZO中間電極界面の観察・分析および上部素子および下部Si素子裏面の終端化・テクスチャーとの併用により一層の高効率化が期待される。更にIZOの紫外領域での吸収損失を低減させ、且つPEDOT:PSS上のプラズマ損失の抑制、導電性高分子PEDOT:PSSに替わるp型金属酸化膜との接合によるエミッター部材の探索が課題として挙げられる。この課題を克服するためミスト塗布法による中間電極層の室温形成プロセスを適用することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
別途研究費により継続して研究を推進するため次年度に繰り越し
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