研究課題/領域番号 |
20K05322
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
金 在虎 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (40511100)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノ表面・界面 / ナノ構造形成・制御 / 表面改質 / フッ素処理 |
研究実績の概要 |
フッ素系ガスを用いた精密フッ素化処理技術によるチタンや銅などの金属微粒子の表面改質を行い、表面上に存在する強固な酸化皮膜の破壊挙動とそのメカニズムを解明することで、高温大気中での酸化膜の急速な成長に伴う焼結不良や導電性低下などの問題解決を試みる。そこで、令和3年度は、 高耐酸化性と高導電性を有するフッ化Cu粉末の作製を目標に、(1)最適なフッ素化条件の確立と表面酸化挙動の確認、(2)各試料の電気導電性の評価について研究を行った。Cu金属粒子表面に異なるF2ガス圧とフッ素と酸素の混合ガスによるフッ素処理を行い、表面上のフッ化物や酸化フッ化物の形成をXPSやXRD分析により確認した。XPS結果ではフッ素化に伴い表面上の銅酸化物の減少と共に銅フッ化物や銅酸化フッ化物の成長を確認した。特に酸素とフッ素の混合ガス処理の場合、銅酸化フッ化物層の成長が著しく大きかった。XRD分析結果ではフッ素化前後に新たなピーク(フッ化物)の出現やピークのシフトがなかったことから、フッ素処理による結晶構造への変化はなく、極表面上での反応であると判断した。また各試料を大気中150℃で熱処理を行い、耐酸化性を確認したところ、未処理やフッ素ガスで処理した試料の場合、試料が黒く変色していて、XPS分析結果、酸化膜の成長が確認された。一方、酸素とフッ素の混合ガスで処理した試料の場合、試料の変色はなく、XPS分析結果ではCuF2のピークの減少と共にCuOxFyのピークが成長していたことから、Cuの耐酸化性を向上させるためには表面上にCuOxFyのような酸化フッ化物のピークの形成が重要であることを示している。今後は各試料の導電性評価と共に、異なる粒径や形状をもつCu粒子へ同様な条件で処理を行い、耐酸化性や導電性への影響について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究目的である「高耐酸化性と高導電性を有するフッ化Cu粉末の作製」が殆ど達成されており、成果も出ているので順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
各試料の導電性評価について追加分析をすることと、異なる粒径や形状をもつCu粒子へ同様な条件で処理を行い、耐酸化性や導電性への影響について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で国際学会を含む全ての学会がオンライン形式に変更され、必要旅費が大幅に削減したことと、試作品の機械的強度評価に必要な成形体金型を現行品で代用可能だったので、その製作費用が不要になったことで未使用額が生じた。 生じた次年度使用額については、論文掲載費用に充てるほか、現在、電気化学測定装置の故障により各試料の導電性評価が出来ない状況だったが、未使用額を修理費用に充てることで、各試料の電気導電性評価を可能とし、目標とした高導電性を有するフッ化Cu粉末の作製を試みる。
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