研究課題/領域番号 |
20K05326
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高木 紀明 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50252416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 表面 / グラフェン / 分子 / 吸着 |
研究実績の概要 |
本研究では、固体表面における原子や分子の低次元ネットワークの創成とその磁性などを含む量子状態を探索・解明し、新規物性を開拓することを主目的としている。 本年度は、フタロシアニン系磁性分子の吸着について研究を進めるとともに、基板の候補となるグラフェンの構造と電子状態について研究を進めた。 フタロシアニン分子については、液体窒素温度での非弾性電子トンネル分光(STM-IETS)による分子振動の検出に成功した。STM-IETSでは、冷却のために液体ヘリウムを用いる。熱による測定装置の熱揺らぎや測定対象となる原子や分子の熱運動を抑制し構造安定性を高めるためである。液体ヘリウムは製造に比較的大掛かりな機器が必要となるため、その利用は限定的である。これを液体窒素で代替できるとその汎用性は大いに高まると考えられる。その意味で、液体窒素温度でスペクトルの観測に成功したことは、特に実用・応用の点から意義があると考えている。2次元超伝導体に吸着したマンガンフタロシアニン分子では、分子固有の長周期構造を作ること、マンガンのスピンと基板電子系との相互作用により、Yu-shiba-Rusinov(YSR)状態や近藤状態が形成すること、長周期構造では反強磁性的な磁気秩序が発現することを示す結果を得た。 グラフェンに関しては、昨年度に測定したフォノンの分散関係の解析を進めを測定した。理論計算や先行研究との比較から、フォノンのブランチを同定した。光電子分光による電子状態も調べ、真空準位の直下にある表面鏡像状態だけでなく、フェルミ準位下の電子状態についても知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フタロシアニン系の磁性分子に関する研究については、解析が進んでいる。また、基板となるグラフェンの構造や電子状態の研究も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
フタロシアニン系の量子状態については解析をさらに進め、近藤効果、近藤格子状態やYu-Shiba-Rusinov状態との競合関係についての知見を得るとともに論文としてまとめる。グラフェン系には、吸着分子によるネットワーク構造の探索を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
招待講演を行う国際会議が最終的にオンライン開催となり、現地への渡航費・宿泊費が不要となった。表面分析用の真空装置と測定系の整備のために使用する。
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