本研究では炭化ケイ素(SiC)半導体上に非晶質シリコン(amorphous-Si: a-Si)層を堆積し、熱処理する“シリコンキャップアニール(Silicon CapAnnealing: SiCA)”によりSiの融点をはるかに下回る温度でSi層がドット化し、さらにはシリサイド化を行わなくとも金属をSiCに接触させるだけでオーミックコンタクトが形成される特異な現象に関する研究を推進した。最終年度においては、SiCA処理したSiC最表面における深いエネルギー領域における欠陥量に関する調査、新たに見出したシリコンマイクロドームの解析を主体的に進めた。 n 型 SiC で観測される代表的な深い準位であるZ1/2センターの量を見積もったところ、SiCA処理により減少していることが示唆された。これらのことから、SiCAが浅いエネルギー領域と深いエネルギー領域の欠陥に対して異なる効果を及ぼしていると示唆される。 脱水素処理を行わずにSiCAを行うことでSiC上のアモルファスSi層がドーム状に結晶化すること、また、900℃というSiの融点をはるかに下回る温度で微小なドットが形成されていることを新たに見出した。解析したところ、Si層のドーム部は多結晶で結晶化し、開口部を有していないことが示された。これは従来にはない新しい構造で、光学的・機械的な応用が期待できる。 以上、研究期間を通じてSiCAがSiC表面に及ぼす状態の評価を進め、エネルギーバンド状態の推定、表面に導入される欠陥の評価を通じてオーミックコンタクトが形成されるSiC表面の状態についてモデルを示した。また、SiCAのプロセスを基盤として、Siの融点をはるかに下回る温度でSiドットが形成される結晶工学的に興味深い現象を新たに見出した。また、これによりSiとSiCの積層構造を利用した開口部を持たないドーム状構造の形成法を開発した。
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