研究課題/領域番号 |
20K05332
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
本多 信一 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (90324821)
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研究分担者 |
肥後 祐司 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (10423435)
庭瀬 敬右 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (50198545)
佐藤 庸平 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70455856)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 圧縮黒鉛 / 中性子照射高配向性熱分解黒鉛 / 相転移カイネティクス / 照射欠陥 |
研究実績の概要 |
高圧高温下における中性子照射高配向性熱分解黒鉛(HOPG)に含まれる欠陥が圧縮黒鉛の形成に及ぼす影響について明らかにするために、その場XRD法を用いて、中性子照射HOPGのGraphite(002)(G(002))面のピークに着目し、14.4GPa の高圧下での昇温過程(最大1010℃)における構造変化の解析を行った。比較のために、未照射HOPGも同一の高圧高温セルに入れて実験を行った。室温におけるその場XRDスペクトルのG(002)ピークに対して形状解析を行った結果、中性子照射HOPGではG(002)ピークを2成分で、一方未照射HOPGでは1成分で表すことができることが分かった。中性子照射試料で得られた2成分の内、格子定数の大きいものは、格子面間隔の増加を引き起こす格子間原子等の面間欠陥に起因するもの、また格子定数小さいものは、面内の乱れを引き起こす転位双極子等の面内欠陥に起因するものと考えられる。さらに、高圧下での昇温に伴うその場XRDスペクトルのG(002)ピークに対して形状解析を行った結果、照射試料では室温から約600℃までは2成分、それよりも高温では1成分、一方未照射試料では1成分でフィッティングできることが分かった。照射試料でフィッティング成分が減少することは、照射に伴う構造の乱れの高圧高温下での回復を示唆するものと考えている。 一方で、高圧下において2000℃を超える高い温度領域で、ヒーターや熱電対等の損傷がない安定した実験の実施に向けて、新たに高圧高温セルの設計・製作に取り組んだ。試料を保温性の高い材料で取り囲むように工夫してセルを作製することで、15GPa、2300℃の高圧高温状態を安定して達成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの世界規模の蔓延(主に2020年度の影響)
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究において、14.4GPa の高圧下での昇温過程(最大1010℃)における構造変化を調べた結果、圧縮黒鉛の合成のためにはさらに高い温度が必要であることが示唆された。そのため、今後の研究では、新たに製作した高温高圧セルを用いて、高圧処理に加えて、より高い温度での処理を施し、中性子照射HOPGの構造変化を調べる。具体的には、15 GPaに圧力を固定し、室温から2300℃まで昇温し、試料のその場XRD測定や回収試料に対するXRD分析、ラマン分光分析、TEM分析等の各種分析を行う。さらに、超音波法測定システムにより、面間距離変化だけでは捉え難い、圧縮黒鉛に相転移した際の弾性率変化観察についても検討する。
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