本研究では,核スピン転換とともに回転状態の変化を伴う水素分子のオルト-パラ転換を通して,固体表面に吸着した分子の回転エネルギー散逸過程を明らかにすることを目的とした.パラジウムの(210)面に分子状化学吸着した水素の転換確率の表面温度依存性を調べ,転換確率は表面温度41-60 Kの間で1桁変化することを見出した.得られた実験結果を解析し,エネルギー散逸過程を考察した.これまで回転エネルギーは金属表面の電子系のみへ散逸されると考えられてきたが,それでは実験結果の表面温度依存性を説明できず,電子系とフォノン系両方へ散逸されるモデルを構築することで,実験結果を説明できることが明らかになった.
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