研究実績の概要 |
本年度は、水素と各種金属不純物(Sn, Ce, Zr, Wなど)を共添加した非晶質In2O3薄膜を熱処理(窒素雰囲気、250℃、30分)により固相結晶化させたspc-In2O3:Me,H薄膜の製造と電気特性評価を実施した。薄膜堆積には、直流アーク放電を用いた反応性プラズマ堆積(RPD)法とマグネトロンスパッタ(MS)法を用いた。前者ではIn2O3:H, In2O3:Ce,H (CeO2: 1, 2, 3, wt.%), In2O3:W,H (WO3: 1 wt.%), In2O3:Sn,H(SnO2: 1, 3, 5, wt.%)薄膜を、後者ではIn2O3:H, In2O3:Ce,H (CeO2: 0.5, 1, 2, wt.%), In2O3:Zr,H (ZrO2: 1 wt.%), In2O3:Ga,T,Zr,H, In2O3:Sn,H(SnO2: 1, 2, 5, wt.%)薄膜を堆積させた。堆積時の水蒸気分圧と酸素分圧は、各製造方法と原料に合わせて最適化を行った。その結果、①MS法とRPD法の両方で堆積したspc-In2O3:H, In2O3:Ce,H, In2O3:Sn,H薄膜の電気特性は、薄膜堆積法に依らず同等であること、②spc-In2O3:HとIn2O3:Ce,Hでは約150 cm2V-1s-1、spc-In2O3:Zr,HとIn2O3:W,Hとspc-In2O3:Ga,Ti,Zr,Hでは約100 cm2V-1s-1、 spc-In2O3:Sn,H(SnO2: 1wt.%)では約70 cm2V-1s-1の移動度を示すことが分かった。非晶質薄膜堆積時のIn, O, Me, Hの組成制御が重要であること、Ce、Zr、W、あるいはGa-Ti-Zr共添加はSnよりも高い移動度を実現し、中でもCeは極めて優れていることを明らかにした。
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