単一デバイスで光による充電が可能な「光蓄電池」の全固体化を目指すにあたり,今年度は電界紡糸法によって得られた直径100 ナノメートル(nm)程度の活物質ナノファイバ(NF)からなる不織布状シートのNF間を固体電解質で満たし,NF表面の広い反応場によってイオンの挿入脱離過程を高速化することで,光蓄電池の光電変換過程とのマッチングを取ることを目指した.そのために,(a) Li3V2(PO4)3 [LVP]のNFと同じリン酸系で高イオン伝導率を示すLiAlTi(PO4)3 [LATP]固体電解質を複合化した場合と,(b) カーボンNF上に蓄電材としてWO3ナノ粒子を担持させ,ポリアニリン[PANi]で覆うことで固体電解質との接触を改善させた場合,(c) Li4Ti5O12 [LTO]のNFとLiLaTiO3 [LLTO]固体電解質を複合化した場合で,NF/固体電解質界面でのイオン伝導特性を平坦膜界面でのそれと比較することで,NF化による得失を調べた.その結果,(a)では,LVP-LATP界面の面積が広がることで界面抵抗は小さくなったが,LATPの結晶化度を上げることが課題となった.(b)ではPANiで被覆することで界面接続が改善されることがわかった.(c) LTO-LLTO界面では他の2つに比べ良好なイオン伝導特性が得られ,NF化によってイオンの挿入脱離エネルギーが下がりイオン移動の時定数が短くなることが明確に示され,それが界面抵抗の低下と充放電容量の増大につながることがわかった.以上のように,活物質をNF化することで,より全固体化光蓄電池の蓄電層に求められる性能に近づけられたが,NFネットワーク中に固体電解質を均一に挿入するのが難しく,それが全体的な界面抵抗の増加と蓄電量の低下を招いているため,全固体光蓄電池の実現には作製プロセス上の工夫が必要であることがわかった.
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