研究課題
本研究は、膜型表面応力センサ(Membrane-type Surface Sensor)をセンサのプラットフォームとして、測定環境に影響を受けないロバストな嗅覚センサシステムの構築を目指すものである。初年度となる2020年度は、まず測定法について検討を行い、測定プロトコルの最適化を行った。具体的には、多チャンネルMSSチップをニオイにかざすことで測定を行う「フリーハンド測定」のセンサチップのかざし方と、その結果得られる各センサチャンネルの応答の時系列データより計算される「伝達関数比」からの特徴量抽出法の検討を行った。評価方法としては、最終的に得られる伝達関数比のデータセットに対してクラスタ分析および機械学習識別モデルの構築を行った。その結果、センサチップをかざす頻度は高く、また解析に用いる伝達関数比は低周波成分を用いることで、クラスタの指標であるDavies-Bouldin indexが良くなり、また機械学習識別モデルも高精度のものが構築できることを明らかにした。また、これらの結果は、MSSを含むナノメカニカルセンサの理論モデルとも対応しており、ナノメカニカルセンサの感応膜でのガスの吸収・脱着のダイナミクス、および感応膜の粘弾性的な性質を反映していることがわかった。また、恒温恒湿装置を導入し、ポリマー材料を感応膜材料として用いたMSSにより、温度・湿度を様々に変えた環境下での測定データの収集を始めた。これまでに、センサの応答が温度に対して安定な材料、湿度に対して安定な材料などが確認されている。
2: おおむね順調に進展している
ニオイ識別を行う測定法についてその安定性を評価することで、今後の研究におけるロバスト性の基礎が確立された。この測定法に関しての基礎的な知見およびナノメカニカルセンサの理論モデルとの対応が取れたことは、今後本格的に温湿度の影響を評価していく上で重要である。また、ポリマー材料を中心に、感応膜としての特性の温湿度に対する影響を評価し、測定データを収集できたことから、当初の計画通り順調に研究が進行しているといえる。
当初の計画通り、温湿度に対するセンサ応答のデータを蓄積し、それを活用した嗅覚センサシステムを構築することを目指す。具体的には、初年度で温湿度安定性を評価したポリマーに加えてカーボン系材料やシリカチタニアナノ粒子等、これまでに感応膜としての実績のあるナノ材料についても同様に温湿度安定性を評価したデータの収集を行う予定である。また、測定するニオイについてもこれまでの単成分ガスだけでなく、多成分からなる実際のニオイ試料についても評価を行っていく予定である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) 産業財産権 (1件)
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