研究課題/領域番号 |
20K05345
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
今村 岳 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (60715754)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | センサ / 嗅覚 / インフォマティクス |
研究実績の概要 |
本研究は、膜型表面応力センサ(Membrane-type Surface Sensor)をセンサのプラットフォームとして、測定環境に影響を受けないロバストな嗅覚センサシステムの構築を目指すものである。2021年度は、実際のニオイ試料としてエッセンシャルオイルを用いて、感応膜の異なる複数のMSSチップにてフリーハンド測定を行いニオイデータの収集を行った。フリーハンド測定の基礎となる伝達関数比による解析は、原理的には測定時の波形に依存しないものの昨年度の検討から特定の周波数成分を多く含む波形になるような測定で精度が高まることが明らかになったことから、フリーハンド測定を行う際の測定プロトコルの見直しを行った。これに基づいて、13種類のポリマーを感応膜として7種類のエッセンシャルオイルのニオイ測定を行った。測定データから伝達関数比を計算し、クラスター解析を行ったところ、ニオイの成分に対応して特徴量空間上で各エッセンシャルオイルの測定結果がクラスターを形成し、また、似た化学組成(主成分が、同じ分子もしくは類似の構造を有する分子)のエッセンシャルオイルではクラスターの分離が悪く識別の精度も低くなることを確認した。 一方で、伝達関数比をもとにした新たな解析法の開発を行い、その理論的な基礎を構築中である。この解析法を用いることにより、あるニオイの識別を行うための感応膜の選定に関して、これまで原理的に比較ができなかった異なるセンサアレイ間での測定結果が利用可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
7種類のエッセンシャルオイルという実ニオイサンプルについて、ポリマーを感応膜として環境を変えて複数回ニオイ測定データを得られたことから、インフォマティクスを活用するために必要なデータが順調にそろってきており、順調に進んでいると言える。また、フリーハンド測定以外の新しい測定法についても検討を行っており、よりロバストなセンシングに向けた基礎が固まりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現在開発中の新しい解析法を確立し、ニオイ測定データに対して適応することで、ニオイの測定法の最適化だけでなく、感応膜の最適化を、インフォマティクスを活用して行うことを目指す。これにより、測定法・環境に対してのロバスト性を上げるだけでなく、データが集積することでより最適な感応膜の組み合わせを提案することのできるセンシングプラットフォームを確立し、ロバスト嗅覚センサの実現を目指す。
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