研究実績の概要 |
本研究は、膜型表面応力センサ(Membrane-type Surface stress Sensor, MSS)をセンシングのプラットフォームとして、温度や湿度などの外乱に対してロバストな嗅覚センサシステムの構築を目指すものである。2022年度は、ソフトウェア的に外乱を排除するだけでなく、ハードウェア的に外乱を排除する新測定法の開発を行い、理論的・実験的に検証を行った。具体的には、ニオイを直接比較するrepetive direct comparison method (rDC法)という、比較したいニオイを直接交互に導入する測定法の開発を行った。通常ニオイ測定では、測定したいニオイとキャリアガスを交互に導入してセンサの応答を得て、それらを比較することでニオイの比較を行う。この手法では、各ニオイ試料の測定時の温度や湿度の差などがノイズとなり、それが原因でセンサ応答が変化してしまうため、比較して得られた結果がニオイの違いに由来するものなのかわかりにくいという欠点があった。そこで、比較したいニオイ2種類を交互に導入し直接比較することで、外乱の影響を受けず、常にニオイの差分だけがセンサ応答として検出されることを実証した。 研究期間を通して、温度湿度を様々に変えてニオイのデータを取得することで、機械学習を含むデータ解析により外乱の影響を除去できる可能性が示されたことに加えて、rDC法のように測定法を改良することで、外乱の影響を排除したニオイ比較ができることを示すことができた。また、これまでの研究成果を活用し、嗅覚センサの社会実装を目指すスタートアップ企業「株式会社Qception」を2022年5月に設立した。このスタートアップを通して企業との取り組みを加速させることで、本研究で得られた成果物の社会実装を加速させる。
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