研究課題/領域番号 |
20K05348
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
山口 智広 工学院大学, 先進工学部, 教授 (50454517)
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研究分担者 |
佐々木 拓生 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, 主幹研究員 (90586190)
村上 尚 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90401455)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | In系窒化物半導体 / ヘテロエピタキシャル成長 / ヘテロ界面 / 分子線エピタキシー(MBE) / X線その場観察 |
研究実績の概要 |
本研究は、InGaNやIn(Al)GaNを含むIn系窒化物半導体ヘテロエピタキシャル成長におけるヘテロ界面制御技術の構築を目的としている。この「ヘテロ界面」には、成長結晶を高品質に保った状態で格子緩和された基板との界面、および、格子緩和のない高品質結晶からなる量子構造の界面を含むものとする。In系窒化物半導体ヘテロエピタキシャル成長時の界面領域における格子歪み・格子緩和、結晶欠陥の発生とその低減プロセス、界面での原子の置換反応、混晶組成揺らぎの動的挙動の理解と制御技術の構築を通して、ヘテロ界面の制御されたIn系窒化物半導体マトリックス構造を製作し、高い内部量子効率を有する赤色発光の実現をめざしている。 昨年度、量研機構のMBE-XRDその場観察システムを用い、InGaN成長結晶を高品質に保った状態で格子緩和された基板(GaNテンプレート)との界面を製作する技術として、InGaN低温バッファ層の挿入やSi層の挿入が有効であることを確認した。 この技術を使い、緩和の促進されたInGaN下地層を形成し、その上にInGaN/InGaN量子井戸構造を製作した。また、比較のため、GaN下地層の上に同条件でInGaN/InGaN量子井戸構造を製作した。InGaN下地層上、GaN下地層上のどちらの場合においても井戸層の厚さを1 nmから5 nmと厚くするにつれ、発光波長の長波長化を確認した。GaN下地層上InGaN/InGaN量子井戸構造からの発光ピーク波長530~590 nmに対し、InGaN下地層上では600~710 nmのピーク波長を有する赤色領域での発光が確認された。InGaNを下地層とすることによりInGaN/InGaN量子井戸構造でのIn取込みを促進でき、結果として、発光波長の長波長化を促進できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘテロエピタキシャル成長界面における動的挙動の理解のため、その格子緩和のプロセスを中心に、大型放射光施設SPring-8内にある量研機構のMBE-XRDシステムを用い研究分担者佐々木(量研機構)とともに研究を進めている。in-situ XRD逆格子マッピング測定を通して、InGaN成長結晶を高品質に保った状態で格子緩和された基板(GaNテンプレート)との界面を製作する技術として、InGaN低温バッファ層の挿入やSi層の挿入が有効であることを確認している。 上記得られた知見を活かし、汎用的なMBE装置を用い、GaNテンプレート上に緩和の促進されたInGaN層を成長させ、さらにそのInGaN層を下地層としてInGaN/InGaN量子井戸構造を製作し、同構造からの赤色発光を確認できている。 さらなる高品質InGaN結晶実現をめざし、工学院大学でInGaN下地層を製作し、その上にHVPEを用いたInGaNホモエピタキシャル成長を行う研究についても、研究分担者村上(東京農工大)とともに開始しており、研究開始時の研究の概要に従い、おおむね順調に進展できている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ヘテロエピタキシャル成長界面における動的挙動の理解のため、大型放射光施設SPring-8内にある量研機構のMBE-XRDシステムを用いて研究を遂行していく。SPring-8の使用時間は限りがあるため工学院大学の汎用的なMBE装置での実験とあわせながら研究を遂行していく。 今年度、InGaN/InGaN量子井戸構造からの赤色発光を確認している。このサンプルを基準として、界面領域における格子歪み・格子緩和、結晶欠陥の発生とその低減プロセス、界面での原子の置換反応、混晶組成揺らぎの動的挙動の理解と制御技術の構築をはかることにより、界面制御(例えば量子井戸内の急峻な界面の実現)をめざす。またそれらと発光効率の相関性を検証し、量子効率の向上をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時からの減額につき、また、現在までの達成度はおおむね順調に進展できていることも鑑み、最終年度に十分な研究が行えるように配慮した。未使用分については主として消耗品の購入と実験装置等の設備維持・保守費に充てる予定である。
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