研究実績の概要 |
実験については高温イオン照射によるボロン空孔(VB)形成によるスピン特性改善、LiおよびClイオン照射による異種元素置換型スピン欠陥の作成および光学特性評価を行なった。 イオン照射は一般的に目的の欠陥だけでなく様々な不要欠陥も同時に導入されてしまう。熱処理は不要欠陥を除去する最も簡便な方法であることが知られている。そこで、室温イオン照射後の熱処理および高温イオン照射によるVB形成を行い、光学・スピン特性への影響を調べた。その結果、高温イオン照射では100℃以上高温でのVB形成が可能であることがわかった。スピン特性の一つの指標である光検出磁気共鳴信号コントラストが向上するとともに、結晶歪みを反映するパラメーターであるゼロ磁場分裂項Eを大きく改善することができた。本成果については論文投稿準備中である。 去年度および今年度の理論検討から(後述参照)、多くの候補元素が挙げられた。その中から、陽・陰イオンの関係(ボロンサイトには陽イオン、窒素サイトには陰イオンが入りやすい)および使用加速器の元素制限を考慮して、LiおよびClイオン照射による異種元素置換型スピン欠陥形成実験を行なった。Liの場合、発光スペクトルには既知のピークしか観察されなかったが、Clにおいて未報告のピークが認められた。 理論検討については、去年度の第二周期元素に引き続き、第三周期元素の置換型欠陥の検討を行なった。選別条件は、1. スピン数が1以上、2. 電子準位ギャップが1eV以上、3. 荷電状態が1-, 0, 1+、の3つを課した。理論計算の結果、ボロンサイトではNa(0→荷電状態、以下同)、P(0)、窒素サイトではAl(0, 2+)、S(2-)、Cl(2-, 1-, 0)、Ar(2-, 1-, 1+)をそれぞれ有力候補として抽出することができた。
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