「光結晶化を用いた生体センシング用フレキシブル酸化物薄膜センサの創製」に関し、最終年度は伝導性酸化物酸化物の前駆体膜に対し、紫外線パルスレーザー光を照射しながら伝導特性を計測する過渡現象計測実験を実施した。その結果、ナノ秒パルスレーザー照射によってパルス昇温の効果が得られると計算される数ミクロン秒よりも10-100倍以上長い期間に渡って結晶成長に伴うと考えられる抵抗値変化が観測された。この現象の観測により複数のパルス幅を有する光源の利用や連続光の併用など種々の光アシスト効果が光結晶成長に対して有効である可能性があることを見出した。一連の超精密結晶成長を実現する紫外線レーザー照射時の光結晶化パラメータの検討と、レーザー照射時のナノ秒スケールの熱拡散のシミュレーション評価技術を駆使することで、ポリイミド樹脂基材上へ熱拡散中間層の導入し、配向制御した一軸配向PZTの製膜に成功した。本研究期間全体を通じ、 目標設定を超える5μmという極めて薄いポリイミド上へ、膜厚1μmの酸化物サーミスタア レイ薄膜の形成や、わずか15μm径の樹脂細線上へスピネル系酸化物を主要構成材料とするサーミスタセンサ薄膜を形成に成功した前者の極薄サーミスタでは、わずか重さ数十mgのサーミスタシートは500μmの屈曲性を実現し、人体に容易に吸着するほど軽量かつ形状可変であり、1000回の屈曲試験、1000回の25℃~80℃の冷熱サイクル試験でも劣化しない 耐久性、100msという極めて高速な温度応答を実現した。後者の極細サーミスタセンサでは、非常に小さな基材の熱容量を活かし、同様に100msの応答性を得ることに成功した。以上のようにパルス光を利用し、光の効果を精緻に制御することによってこれまでにない生体センサ用材料の開発に成功した。
|