研究課題/領域番号 |
20K05355
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
姚 永昭 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (80523935)
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研究分担者 |
石川 由加里 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主席研究員 (60416196)
菅原 義弘 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (70466291)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | X線トポグラフィー / X線回折 / 転位 / バーガースベクトル |
研究実績の概要 |
本研究は、大きさ数インチのβ-Ga2O3単結晶基板またはエピタキシャル膜に適用可能な非破壊の転位検出・分類手法を開発し、β-Ga2O3に存在する全ての転位種類を明らかにすることを目的とする。 大面積にわたる転位の密度と面内分布を観測し、g・b解析(gは回折ベクトル、bは転位のバーガースベクトル)に基づき、転位を分類する放射光X線トポグラフィー観察法の開発を行った。 初年度は、市販Φ2~4インチのEFG単結晶基板を用い、大面積転位検出法の開発に取り組んだ。まずは、XRDを用いて結晶の曲率半径(R)を評価した。その結果、面内位置によってRが20~50mであり、結晶面が大きく湾曲していることがわかった。この結果を踏まえ、X線トポグラフィー観察では、基板全面の転位を検出するために、それぞれの領域における結晶面の反り具合に合わせた回折角を算出した。24種類の回折ベクトルのそれぞれを満たすBragg条件の近傍で、上記回折角を全て含むωmin~ωmaxの範囲において、ωを連続に変化させながら、高分解能CCDまたは原子核乾板を用いた転位撮影を行った。 CCDで得られた一連の転位像Img=Img(ω)を基に、ピクセルごとのωロッキングカーブを抽出し、試料の面内位置に対応する各ロッキングカーブの最大値(ピーク強度)、半値幅およびピーク位置を計算した。以上の結果から、各ロッキングカーブの最大値で再構成した画像から転位が検出できることがわかった。また、原子核乾板で撮影した24通りのgベクトルでの画像のg・b解析を行い、12種類の転位バーガースベクトルの存在を実験で証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現行のβ-Ga2O3基板が成長過程に起因する激しい結晶面の反りを有することを想定していた。実際のXRD測定ではRが20~50mであることがわかり、ωを連続に変化させることで転位撮影が可能だと判断した。XRT観察では、予想とおりの結果が得られ、大面積において転位の検出に成功した。また、理論計算で得られたバーガースベクトルの決定に必要なgベクトルで撮影を行い、予言されたバーガースベクトルを実験で証明した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、単斜晶系の特有な結晶対称性の低さを克服するg/b解析法の確立に注力する。特に、β-Ga2O3の異方性が強いため、g・b=0の消滅則を満たしても転位コントラストが完全に消失しないことが予測される。g・b=0の消滅則という絶対条件ではなく、コントラストの強弱を利用してこの現象を回避する方法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大の影響で、放射光実験の一部が中止となり、実施が遅れた内容が生じた。次年度では、不足分の放射光実験の行い、評価の高度化を実施する予定である。
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