軌道角運動量(OAM)を持つ光波であるラゲールガウス(LG)ビームは様々な分野への応用が期待されている。LGビームはOAMに対応する方位角モードと、それとは別の自由度として動径モードを有する。本研究では幾何学的変換を利用してLGビームの方位角モードと動径モードのモード変換技術を確立することを目的とした。 初年度は方位角モードの逓倍変換についての理論解析と実験的な変換効率の向上、および分周変換の理論検討を行なった。理論解析については、逓倍変換の精度と効率を様々な角度から比較し、効率の高い実装方法を発見した。さらに理論解析で明らかとなった高効率な逓倍変換手法を実際に実験で確認した。2年目は動径モード変換に関する理論解析と、3逓倍および1/2分周のモード変換の実験を行なった。動径モード変換の理論解析については、動径モードを固有値に持つ微分演算子(モード演算子)に対して幾何学変換を施した際に、固有値が逓倍・分周されるように条件を課すことで動径モード変換に必要な条件を導出することを試みた。3逓倍と1/2分周変換については、所望モード以外のモードが生成されるクロストークを実験的に評価した。最終年度は動径モード変換に注力したが、上記手法では有用な動径モード座標変換を見つけ出すことができなかったため、動径モード演算子を実験的に実装する手法を提案して、数値シミュレーションを行なってその実効性を確認した。 その他の共同研究成果として、フランス・ボルドー大学のEtienne Brasselet教授との共同研究として、OAMビームを用いた液晶分子の再配光制御の実験を行なった。また、申請者と同時期にOAM逓倍変換の実験を実施していたイタリア・パドヴァ大学のGianluca Ruffato助教と共同研究を行ない、OAM逓倍・分周変換の過程で現れるコースティクス(光線が重なり合い明るく見える包絡線)についての理論及び実験研究を行なった。
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