研究実績の概要 |
令和4年度は、間接遷移型半導体薄膜における光ブリーチング現象の解明を試みた。Pump-probe技術に基づく過渡透過・反射の同時測定により、分子ビームエピタキシャル法で作製した間接遷移型のp型Ge薄膜における光ブリーチングの持続時間が、直接遷移型のInN薄膜に比べて長くなることを明らかにした。さらに、広帯域なレーザ光をProbe光に用いて、Pump光で励起されたGe薄膜中の価電子が励起後の振る舞いを観測した。本来Geにおいて吸収が観測される波長領域において、Pump光の集光照射により、Probe光の透過率の上昇が確認された。これは、価電子帯から励起された電子が散乱による位相散逸後にホット電子を形成してから、Gamma バレーや、谷間散乱に伴いLバレー内の空準位を一時的に占有することが起因したと考えられる。また、Pump-probe測定における時間原点を精密に決め、Gamma バレーからLバレーへの谷間散乱時間を導出した。この谷間散乱時間を考慮し、Two Temperature Modelを拡張し、間接遷移型Ge薄膜における高密度励起による波長スペクトルの時間変化を説明した。以上の結果は、現在論文投稿中である。
この基盤研究の研究成果として、まず、直接遷移型半導体薄膜において、高密度光励起による光ブリーチング現象の物性理論を構築し、その成果はJ. Appl. Phys., 132, 165702 (2022)で公開された。また、高密度光励起による間接遷移型半導体薄膜における光ブリーチング現象を実験的に計測し、その物性理論を構築した。今後は、光ブリーチング現象を自在に制御する目的で不純物の導入や、量子井戸構造など複合的な方法を組み合わせ、より低い励起強度で効率的なブリーチングデバイスを創出することを目指す。
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