研究実績の概要 |
生体の深くまで浸透する近赤外に対して感度の高いブラックシリコンイメージセンサを複眼化した.ブラックシリコンの受光感度域は400nm~1300nmであり,1μm以上の波長にも感度をもつため,歯肉深部の計測が可能である.130万画素(1280×1024画素)のイメージセンサを3×3眼の複眼化し,個眼当たりの画素数を300×300画素以上と,歯肉の計測には十分な画素数にできた. 歯肉の数値モデルとして,まず歯肉と歯槽骨から成る2層モデルを考えた.また,歯肉については全ヘモグロビン濃度,酸素飽和度,パワーローに従う換算散乱係数,厚み(合計5パラメータ)を未知とし,歯槽骨の吸収係数・換算散乱係数は既知とした.複数のGPUを用いた超高速モンテカルロシミュレータを構築し,様々なパラメータの組み合わせについて計測波長に対する反射率のデータセットを作成した.3層ニューラルネットワークを用いて学習を行い,計測した複数波長に対する反射率から歯肉厚を推定することを試みた.9つの波長(466nm, 541nm, 633nm, 750nm, 776nm, 863nm, 921nm, 935nm, 967nm)の反射率から,歯肉厚0~1.5mmについて良好な線型性が得られた.また,広い計測波長範囲を選ぶと4波長(例えば541nm, 633nm, 766nm, 935nm)でも歯肉厚が良好に推定できることを数値シミュレーションにより確認した.歯肉厚を場所によって変えた数値ファントムを作成し,3層ニューラルネットワークにより歯肉厚の2次元分布が得られることをシミュレーションにより確認した.
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