雑音状パルス(NLP)の発振特性の向上を進めており、今年度は、応用技術と共にその範囲を広げるための高エネルギー化に関する検討を軸に進めた。 NLPは、長尺な光ファイバにより、バルクの光学系では得られない高い非線形性を利用して発振させる、マルチパルスのレーザーである。ただし、一般に連想されるマルチパルスと異なり、パルスが群を成して発振することにより新たな効果を得られる。このような発振形態のため、ある程度のファイバ長を必要とし、共振器長を短くできない。そのため、高エネルギー化に必要となる高い繰り返し周波数を得ることが困難である。 上記の解決は実用化に向けて重要である。この解決方法として次の二つの手法に取り組んだ。一つは、短い共振器長における低い非線形性においてもNLP課する条件の探索。二つ目は、既に発振したNLPの繰り返し周波数を高める方法の開発である。また、既存のNLPを、増幅することにより、パルスあたりのエネルギーを増加させる検討も進めた。 共振器長の短尺化に関しては、パルスの時間広がりに起因するピークパワーの減衰を抑え非線形性を確保するために、ファイバ光学系の分散の調整を実施し、さらに偏波状態の精密な調整により従来比で約1/5の共振器長における従来比5倍の周波数を持つNLPの発振に成功し、これまで2~3MHzの繰り返し周波数であったものを10MHzに増加させられた。 発振後のパルス繰り返し周波数の増加に関しては、パルスを2分岐して片側をマイクロ秒領域で遅延させて合波する全ファイバ型光学系の構築を実施し、パルス繰り返し周波数の増加が可能であることが確認できた。それぞれの方式に特徴があり、高エネルギー化に有益であり、新しい波長の発生に貢献しているが、各種手法に長所と短所が存在している。 また、新たな波長のNLP発振にも成功しており、従来波長に加えた応用範囲の拡大を進めている。
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