研究課題/領域番号 |
20K05371
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
長島 健 摂南大学, 理工学部, 教授 (60332748)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 液体膜 / 水膜 |
研究実績の概要 |
放射源となる液膜の生成装置を製作した.均一な膜が得られるよう,ノズル角度およびポンプ駆動電圧を最適化した. フェムト秒再生増幅システム(中心波長800 nm,パルスエネルギー ~1 mJ,パルス幅 ~130 fs)を用いたTHz波時間領域分光システムを作製した.液膜にはプレパルス及びメインパルスを照射できるようにした.代表者らがNanomaterials 8, 523 (2018)で報告したように,THz波強度を最大化するよう両パルスの時間差は4~5 ns程度にできるよう光路長を調整した. まず放射源に非線形光学結晶ZnTeを用いて,テラヘルツ波波形が十分なSN比で計測できることを確認した.次に蒸留水膜に照射してテラヘルツ波波形が観測できることを確認した. 次にシンチレーションカウンタを用いた集光位置最適化スキームを確立した.レーザー集光位置によってテラヘルツ強度は敏感に変化する.テラヘルツ波計測では,集光位置を調整するたびにテラヘルツ波波形をスキャンする必要があるため,集光位置最適化には多くの時間を要する.一方,X線強度もレーザー集光位置によって大きく変化することがわかっている(Nanomaterials 8, 523 (2018)).X線強度とテラヘルツ波強度の間には正の相関があり,X線強度はシンチレーションカウンタで比較的容易に計測できる.そこで,X線計測用シンチレーションカウンタを導入し,フェムト秒レーザー照射によりプラズマ化した水膜からのX線強度を計測することで,レーザー集光の最適位置を短時間で決定できるようにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウィルス感染拡大に伴う大学構内立入禁止のため,研究活動に制約が生じた.加えて,オンライン授業等の校務が膨大になったことから,本研究のエフォートを確保できなくなり,研究活動が遅滞した.当初予定の重液( ポリタングステン酸ナトリウム水溶液)を用いたテラヘルツ波放射実験を遂行できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,2020年度未達であった重液を用いたテラヘルツ波放射実験を遂行した後,2021年度当初予定であった水溶液ターゲットの溶質依存性測定を実施する.重液を用いたテラヘルツ波放射実験を遅れて実施するため,2021年度予定の液膜(水)厚さ依存性測定をは2022年度に実施する.2022年度当初予定の液体窒素膜からのTHz波放射の測定は,本課題採択後に他グループにより同様の報告がなされていることから,他グループ動向を注視しながら2021年度に実施続行可否を検討する.このように重要度の低い実施項目の圧縮により,期間内の研究目的達成を目指すが,遅滞の主な原因がウィルス蔓延という不測の事態であることから,最終年における補助事業期間延長の申請も検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
主として,2020年度当初予定の重液( ポリタングステン酸ナトリウム水溶液)を用いたテラヘルツ波放射実験を遂行できず,試薬を購入しなかったため.2021年度に試薬を購入し実験を遂行する.
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