研究課題/領域番号 |
20K05371
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
長島 健 摂南大学, 理工学部, 教授 (60332748)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テラヘルツ / レーザープラズマ / 水膜 |
研究実績の概要 |
ダブルフェムト秒光パルス励起水膜からのテラヘルツ波パルスはダブルパルスの相対照射位置及び時間間隔により偏光特性,特に楕円率が系統的に変化するが,その実験結果をまとめた論文を投稿し(2022年3月22日),掲載許可を得た(Communications Physics,2022年5月11日).偏光変化の物理的原因については現状では必ずしも明らかでないが,最初の光パルス(プレパルス)により発生した衝撃波が関与している可能性がある.そこで研究計画にはなかったが,衝撃波がテラヘルツ波放射に及ぼす影響を調べるため,より衝撃波伝搬の観測が容易な空気をターゲットにしてダブルパルス実験を実施した.プレパルスの照射後に発生した衝撃波面に2つ目のパルス(メインパルス)を照射すると放射テラヘルツ波パルス強度が増大し,かつ球状に広がった衝撃波面上の照射位置によって偏光状態が変化することが明らかになった.この現象を説明するため衝撃波面近傍に生じたプラズマ中での過渡的拡散電流モデルを考案した.定性的ではあるが放射テラヘルツ波強度のダブルパルス時間間隔依存性及び偏光特性の相対照射位置依存性を説明できることがわかった. 本研究での実験結果及び放射機構モデルから放射テラヘルツ波強度及び偏光特性は衝撃波によって生じる圧力あるいは密度分布に敏感であることがわかる.このような指摘・提案は代表者の知る限り初出である.本研究の知見を活かし,水膜中衝撃波を用いることでさらなる放射テラヘルツ波増強が期待でき,また上述の偏光特性変化を解明できる可能性がある.本研究で見出されたテラヘルツ波放射現象は衝撃波と高強度光パルスの相互作用に関する新規領域の開拓につながる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の大きな目的の一つは水膜ターゲットでの放射テラヘルツ波強度増大化であるが,その手がかりとして衝撃波の利用に着目した.そこで当初の研究計画にはなかった空気中衝撃波励起テラヘルツ放射機構について調べ,新たな知見を得た.さらにこの知見に関する論文を執筆した(投稿準備中).このように空気実験を追加したため,予定していた水溶液ターゲットの溶質依存性測定が遅れているが,本課題の目的達成に有益な知見を得たことから「おおむね順調」とした.
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今後の研究の推進方策 |
衝撃波に関する実験を新たに見出した衝撃波の関与がテラヘルツ波増強に関し支配的な役割を担っている可能性があることから計画を以下のように変更する.2022年度当初予定の液体窒素膜を用いた実験は「2021年度に他グループ動向を注視しながら実施続行可否を検討」としていたが,これに替えて水中衝撃波励起テラヘルツ放射実験を実施する.その後,水溶液ターゲットの溶質依存性測定を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
主たる理由は2021年度に購入を検討した高精度ジェットディスペンサーの年度内納品が困難と判明したため購入を中止したため.2022年度に再検討をした上で購入する.
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