<最終年度の研究実績> 相変化光スイッチの最適なデバイス構造の探索のため、ITO層とGST薄膜の上下配置を入れ替えた新しい構造モデルのシミュレーションを実施した。スイッチ動作が従来モデルより少し早くなるが、光スイッチの消光比性能が劣化することが分かった。 α-MnTe薄膜の屈折率測定値が、第一原理計算によって再現された。また、MnTeのα-β相間の遷移過程における第一原理計算から、遷移過程におけるエネルギー障壁が分かった。 <研究期間全体の研究実績> 相変化材料GSTを用いた光スイッチ動作を理解するため、光スイッチ動作の時間スケール(数10~数100ns)での実験結果を正しく再現できる「リアルなGST相変化シミュレーションモデル」を作成した。このモデルを用いた光スイッチ全体の連成物理シミュレーションシステムを開発し、研究分担者らが試作した光スイッチ構造のシミュレーション解析を行った。ITO層への電圧パルスの印加によって、GSTの相変化を通して光スイッチの透過率を制御できることを示せた。また、GST薄膜の不均一加熱がGSTのアモルファス化を阻害し、光スイッチの消光比性能を劣化させることを明らかにした。この原因を解析し、温度むらが小さくなる新しいデバイス構造の提案を行った。 光吸収の小さい相変化材料の探索に関して、MnTeを有望な候補として、MnTeの物性と相変化メカニズムを明らかにするための第一原理計算を行った。α相とβ相の複素屈折率の計算結果は、MnTe薄膜の屈折率の測定データをほぼ再現し、波長1.55umの虚部の値と実部の変化の大きさから、光吸収が極めて小さい相変化光スイッチが実現可能であることが分かった。また、α-β相間の遷移過程の計算からエネルギー障壁に関する値を得ることができた。これらは、物理シミュレーションのための相変化モデル構築を進めるための重要な知見である。
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