研究実績の概要 |
ホウ酸塩融体/ガラスの古典的分子動力学へ適用する原子間相互作用の改善に取り組んだ。シミュレーションはホウ酸塩/ガラスの代表的組成系である xNa2O-(1-x)B2O3, (x = 0.1, 0.25, 0.33, 0.4)を対象に行った。この系のガラスの短距離秩序構造(SROS)としてホウ素は酸素3配位, ⅢBあるいは酸素4配位, ⅣBの2種類の構造ユニットを形成することが知られている。また、xの増加に伴いx<0.4までは全ホウ素中のⅣBの割合、RB4が増加することがわかっている。この構造ユニットの組成変化の再現性の向上を指標として以下を実施した。 先行研究と同様の2体間相互作用関数の変数を試行錯誤で再調整し、実施した分子動力学法では、RB4のxに対する変化を測定結果と一致させることはできなかった。分析の結果、シミュレーションでは実在ガラス中に存在しないと考えられている、2員環構造(ホウ素2つと酸素2つが形成する4つのB-O結合からなる環構造)が形成されており、これがRB4の再現性低下の原因の1つと考えられた。その多くはⅣB(四面体ユニット)2つが稜共有した2員環であった。 そこで、2員環の形成を抑制するために、結合角θO-B-OかθB-O-Bのいずれかが 90度とならないよう制御する三体間相互作用関数、U3を加えることが有効であると考えた。ⅢBとⅣBの双方の形成を妨げないためにはθO-B-Oではなく、θB-O-Bの制御が適切であると考え、U3(θB-O-B)を導入した。 U3(θB-O-B)を扱えるようにした。導入したU3(θB-O-B)の調整変数は5つある。これらを調整可能なように、分子動力学法のソフトウェアを改良した。現在、5つの変数の最適化を試行錯誤で進めている。現在、融体状態について、ある程度2員環の形成を抑制することはできている。
|