研究課題/領域番号 |
20K05381
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北村 康則 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (60332706)
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研究分担者 |
三澤 毅 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (70219616)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 燃料デブリ回収 / 再臨界阻止 / 複雑体系 / 炉雑音解析法 / 福島第一原子力発電所 |
研究実績の概要 |
東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所では燃料デブリの回収作業が計画されている。同作業では回収に伴い形状や水との混合状態が変化して、デブリ体系が再臨界に達する可能性が排除しきれない。そのため、これを事前に阻止すべく臨界近接の兆候を検知する技術の開発が行われている。しかしデブリ体系はこれまで原子炉物理学が想定してきた規則的に炉心構成要素が配列する体系と大きく異なっている。本研究はデブリ体系のように組成および外部中性子源分布が複雑で広範囲に広がった体系において臨界近接の兆候を検知するための新しい手法を炉雑音解析法に基づいて提案し、その有効性と問題点およびその改善方法を明らかにするものである。 これまで原子炉物理学分野では、複雑で広範囲に広がる体系に対する炉雑音解析法の適用について、体系を複数領域(多くは2つ)に分割して、それらの結合体系として取り扱ってきた。しかし理論の構築時に、組成および外部中性子源分布が完全に対称となることを仮定してきた。この仮定は現実の燃料デブリ体系と大きくかけ離れている。そこで我々は非対称性を考慮した二領域結合体系における炉雑音解析法理論を構築した。令和2年度は同理論に基づき、非対称な二領域体系における複数の測定位置において炉雑音解析法が与える未臨界度の(臨界状態からの隔たりを示すパラメータ)推定値と真値との相違を考察した。 また令和2年度は、京都大学臨界実験装置における実証実験の予備解析として、実際の福島デブリ堆積体系で想定されるλモード固有値の間隔(核分裂連鎖反応の空間的広がりを示すパラメータ)を参考にして、対称な水平分割炉心を構築するための炉心計算に着手した。さらに分担者は国内の学会にオンライン出席し、情報の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KUCA実証実験の予備解析として、実際の福島デブリ堆積体系で想定されるλモード固有値の間隔(核分裂連鎖反応の空間的広がりを示すパラメータ)を参考にして、対称な水平分割炉心を構築するための炉心計算に着手した。これは令和3年度に予定していたことであるが、令和2年度に予定していた測定系の整備が新型コロナの流行を受けたテレワーク等により大きく進捗しなかったため、先行して実施したものである。 さらに非対称性を考慮した二領域結合体系における炉雑音解析法理論に基づき、非対称な二領域体系における複数の測定位置において炉雑音解析法が与える未臨界度の(臨界状態からの隔たりを示すパラメータ)推定値と真値との相違を考察した。こちらも令和3年度に実施予定の実験結果を解釈するうえで前提となる知識をあたえるもので、先行して実施したものである。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度に予定していた測定系の整備が新型コロナの流行を受けたテレワーク等により大きく進捗しなかったため、令和3年度はこれを優先して実施する。また、京都大学臨界実験装置を用いた実験を実施し、本研究で提案する手法の有効性と問題点およびその改善方法に関する知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に予定していた測定系の整備が新型コロナの流行を受けたテレワーク等により進捗しなかった。令和3年度はこれを優先して実施する。
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