本研究では、発がん高感受性モデルマウス(ApcMin/+マウス)を用いて、トリチウムの発がんへの影響を明らかすることにある。具体的には、トリチウムをトリチウム水として摂取した際の低線量率でのベータ線内部被ばくが、発がんにどのように影響するのか解明を目指している。このモデルマウスは幼若期の放射線被ばくにより、高頻度で小腸に腫瘍が発生することが報告されている。 最初に標的臓器である小腸の被ばく線量を評価した。90MBqトリチウム水を含有する生理食塩水500マイクロリットルを10匹のマウス夫々の腹腔内に接種し、2時間から最長30日まで飼育した。屠殺後小腸を採取、800度で燃焼、そして燃焼水を回収しその濃度から計算により被ばく線量を求めた。その結果、90MBqのトリチウム水の腹腔内投与により、小腸は7日間で2.4Gyの被ばくと見積もられた。腫瘍の発生状況を調べた結果、2.4Gyでは腫瘍数が有意に増加したが、1.2Gyでは増加は見られなかった。 腫瘍の一部から採取した細胞を液体窒素で凍結した後、ー80度の冷凍庫で解析まで保存した。細胞からゲノムDNAを抽出し、18番染色体に存在する複数のMitマーカーに対するPCRプライマーでDNAフラグメントを増幅した。バイオアナライザーでLOH解析を行いトリチウムによる遺伝子突然変異型を解析した。トリチウム水非投与群のマウスと比較して、トリチウム水投与群のマウスは特徴的な欠失は検出されていない。 トリチウム水投与群と非投与群でマウスの体重に有意差はなかったが、トリチウム水投与群のマウスの脾臓重量が有意に増加した。屠殺直後のマウスの心臓から採血を行い、血球計数装置にてリンパ球数、血小板数、赤血球数およびヘモグロビン値を計測した。その結果、リンパ球数と血小板数には有意差はなかったが、赤血球数とヘモグロビン値がトリチウム水投与群で有意に低下していた。
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