• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

耐照射性セラミックスの表面ナノ構造観察による照射損傷メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K05389
研究機関国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

石川 法人  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (90354828)

研究分担者 田口 富嗣  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員 (50354832)
篠嶋 妥  茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (80187137)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードイオン照射 / ナノ構造 / セラミックス
研究実績の概要

高速重イオンを微小入射角で照射した Nb添加したSrTiO3 の表面ナノ構造を調べた成果についてまとめた。セラミックスに対して高速重イオンを微小入射角で照射すると、ヒロックチェーン (イオンの飛跡に沿って、複数個並んで形成されるナノヒロック) が表面付近に形成されることが知られている。我々は、ヒロックチェーンの形態・性状を AFM(原子間力顕微鏡) と SEM(走査型電子顕微鏡) を利用して、詳細に調べた。その際に、全く同じヒロックチェーンを、AFM と SEM のそれぞれで観察することに成功した。AFM の観察データは、先行研究の示す通りに、ヒロックチェーンが形成されていることを示している一方で、SEM の観察データは (同じヒロックチェーンを観察しているにもかかわらず) ヒロックチェーンをつなぐ黒い線状コントラストも現れることが判明した。これらの新しい損傷データをもとに、ヒロックチェーンの形成メカニズムについて推論した。さらに TEM(透過型電子顕微鏡)観察した結果、表面近傍の照射損傷と材料材部の照射損傷の形態が異なることが判明し、表面の存在が大きく照射損傷形態に影響を及ぼすことが分かった。本結果に基づいて、微小入射角で照射した際に形成される特殊なイオントラック損傷の形成プロセスを明らかにした。具体的には、表面付近に形成されたイオントラック損傷は、瞬間的に融けたことを反映して、寸法が比較的大きいのに対して、表面から遠い材料内部に形成されたイオントラック損傷は、瞬間的に融けたのちに部分再結晶したことを反映して、寸法が比較的小さいことが分かった。このことから、表面からの距離に依存して、損傷状態が大きく影響を受けることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

材料内部の照射損傷形態(イオントラック損傷)と表面付近の照射損傷形態(表面ヒロック)との質的な違いが明らかになっており、損傷データが蓄積されて損傷メカニズムに関する我々の仮説が強固になりつつある。また、成果を論文にまとめることが出来ている。本成果をもとに、将来的な課題も見つかった。

今後の研究の推進方策

表面近傍に形成される照射損傷形態と材料内部に形成される照射損傷形態が異なることが分かりつつある。また、試料の厚さを変化させていくことにより、その形態変化を追っていくことが可能であることも分かりつつある。今後は、極薄の試料において現れる表面特有の照射損傷形態を系統的に調べていく。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、当初計画通りに実験を行うことができず、実験に係る費用の支出額が予定よりも少額となったため、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、次年度分研究費と合わせて、実験に係る費用や計画中の極薄試料作製に係る費用として使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Surface nanostructures on Nb-doped SrTiO<sub>3</sub> irradiated with swift heavy ions at grazing incidence2022

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa N、Fujimura Y、Kondo K、Szabo G L、Wilhelm R A、Ogawa H、Taguchi T
    • 雑誌名

      Nanotechnology

      巻: 33 ページ: 235303~235303

    • DOI

      10.1088/1361-6528/ac58a5

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 高速重イオン照射したセラミックスにおける照射損傷メカニズム2021

    • 著者名/発表者名
      石川法人、田口富嗣、大久保成彰
    • 雑誌名

      しょうとつ (原子衝突学会誌)

      巻: 18 ページ: 43~55

    • DOI

      10.50847/collision.18.3_43

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Nanopore Formation in CeO2 Single Crystal by Ion Irradiation: A Molecular Dynamics Study2021

    • 著者名/発表者名
      Sasajima Yasushi、Kaminaga Ryuichi、Ishikawa Norito、Iwase Akihiro
    • 雑誌名

      Quantum Beam Science

      巻: 5 ページ: 32~32

    • DOI

      10.3390/qubs5040032

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 高速重イオン照射した Y3Fe5O12 におけるナノ構造形成2022

    • 著者名/発表者名
      石川法人
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] NbドープしたSrTiO3に対して微小入射角で高速重イオン照射した際に形成される表面ナノ構造2021

    • 著者名/発表者名
      石川法人
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] 高速重イオン照射したセラミックスにおける照射損傷メカニズム2021

    • 著者名/発表者名
      石川法人
    • 学会等名
      令和 3 年度材料照射研究会
  • [学会発表] Surface morphology of Nb-doped SrTiO3 irradiated with swift heavy ions at grazing incidence2021

    • 著者名/発表者名
      石川法人
    • 学会等名
      Materials Research Meeting 2021 (MRM 2021)
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi