昨年度は,本技術の有望な応用先である群発地震に関して より理解を深めることとし,研究分担者が,精力的に研究を行なっている東北地方の群発地震に対して,これまで注水時の誘発地震の解析で蓄積されてきた知識や解析手法を応用することで,群発地震を励起させたと考えられる流体の量を逆推定した。さらに推定した流体量を地質学的な知見から議論し,蓄積されていた流体量が,プレートの脱水量を元にして,どれくらいの年月の脱水過程で供給されるかを検討した。 その年月と,地震学的な観測結果や知見と照らし合わせて,群発地震の周期,また巨大地震との関連性を議論することができた。さらに,推定した流量からは,様々な鉱物脈の生成の可能性も示唆された。 本年度はこの成果を論文としてまとめることに注力した他,分担者はさらに他地域の群発地震の研究も進め,そこにも多少貢献できた。 研究期間全体を通して,近年の誘発地震研究分野の蓄積が新たに可能性を開ける地震学的な解析手法を提案する予定であり,そのフレームワークの構成,基礎的な解析コードの準備まではできたが,エフォート的な問題もあり,その先に思うように進めることが出来なかった。今後,この研究は独自に継続する予定としており,坑井から得られる地球物理学的な事前情報を組み込んだモーメントテンソル解析の開発は続けていきたい。一方で,誘発地震研究分野の知見の蓄積は,群発地震の流体量推定という,違う形で地球科学に貢献できた。
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