研究課題/領域番号 |
20K05397
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤野 貴康 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80375427)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MHD発電機 / 希ガスプラズマ / 電磁流体解析 |
研究実績の概要 |
大量の再生可能エネルギー電源を含む次世代電力システムを見据え,今後の火力発電機には電力需給ギャップの調整電源としての高い出力調整能力が求められている。この要求に対し,希ガスMHD発電機が回転型火力発電機とは異次元のレベル(1秒未満の高速大規模出力調整)で応じられることが研究代表者の先行研究から予測されている。そこで,研究代表者は,次世代電力システムの系統安定化に貢献する高速大規模出力調整用希ガスMHD発電機の開発を早期に実現すべく,独自に発案した「低温駆動希ガスMHD発電機」の創出を目指す研究を本科研費の支援のもとで開始した。
R3年度は,R2年度で数値設計した低温駆動希ガスMHD発電機の流路形状・基本仕様のもと,非定常電磁流体解析を実施し,発電流路入口で発電に適切な電子温度5000 K程度のプラズマが得られるのであれば,1200 K程度まで発電機の入口ガス(澱み点)温度を下げても,設計時の定格発電性能を安定に得られることを確認した。さらに,R2年度に開発した発電機設計解析プログラムを利用して,入口ガス(澱み点)温度を2000 Kから1200 Kの範囲で,異なる入口温度を持つ希ガスMHD発電機を複数設計し,それらに対して非定常電磁流体解析を実施して希ガスMHD発電機の出力調整幅(下げしろ)に及ぼす入口全温度の影響を調べた。その結果,高温度側よりも低温度側の方が出力調整幅を拡げられる可能性が示された。
以上のR3年度の研究から,1200 K程度の低温駆動希ガスMHD発電機の定格運転時の発電特性および同発電機の出力調整幅に関する知見を電磁流体解析からではあるものの当該分野において初めて提示することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R3年度中期から低温駆動希ガスMHD発電機の出力調整能力の把握を進める計画であった。出力調整幅と出力調整時間の両面から評価する予定であったが,実質的な成果としては出力調整幅の評価に留まってしまった。その理由は,当初の研究計画時には想定していなかった「低温駆動の方が出力調整幅が広い可能性がある」ということが解析結果から提示され,その物理的考察に時間を要したためである。ただし,出力調整時間を調べるための解析技術(電磁流体解析と電力系統解析の連成解析技術)の準備は完了しているので,R3年度研究計画からの幾分の遅れを取り戻せるよう,今後,効率よく解析を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに数値設計した入口ガス(澱み点)温度1200 K程度の低温駆動希ガスMHD発電機(比較対象に2000 K程度の高温駆動希ガスMHD発電機)を対象に電磁流体解析と電力系統の連成解析を実施し,発電機の出力調整能力(応答速度)を把握する。解析結果より,低温駆動希ガスMHD発電機の出力調整能力(応答速度)が高温駆動希ガスMHD発電機のその能力よりも劣る場合には,原因の究明および選定する発電機の見直しはもちろんのこと,能力改善に向けた方策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由としては,(1)国際会議・国内会議発表のための出張旅費がこのコロナ禍で計画通りに執行できていないこと,(2)電磁流体解析と電力系統の連成解析には高性能な計算機(複数)の新規購入が要求されるが,研究計画の幾分の遅れで,それらのための研究費の使用はR4年度となったことが上げられる。
次年度の主な使用計画として,(1)高性能計算機環境の整備費用,(2) 計算機環境の保守管理のための学生短期雇用,(3) 成果発表利用(国内会議・雑誌論文掲載料等)を予定している。
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