本研究では、太陽熱をエネルギー源とした蒸留システムの高性能化を目指し、蒸気を凝縮させるコンデンサ凝縮面とその背面の放熱面における界面現象の制御を目的としている。研究の最終年度となる令和4年度は、前年度までに構築した凝縮面・放熱面の製作プロセスおよび可視~赤外域での分光光度計測を活用して、様々な形態の蒸留システムへの応用を想定した放射冷却コンデンサの性能評価を実施するとともに、気象条件が影響する日照下での試験結果を定量的に解釈するためのデータ解析、および放射冷却コンデンサ応用の際に求められる水輸送技術の検討を進めた。 放射冷却コンデンサは、蒸留システムの設置環境や構成に応じて、要求される機能や適する形態が考えられる。そこで、太陽光を金属面により鏡面反射させる従来の方法に加え、光散乱性セラミクス粒子の放射層内分散により拡散反射させる方法、さらに可視光を透過させシステム内部で熱利用する方法、のそれぞれについて放射冷却面を試作して実験的検討を行った。凝縮面については、金属面の親疎水ハイブリッドパターン形成に加え、高分子素材による膜形成を用いて非金属面上に親疎水ハイブリッドパターンを作製する手法を構築した。次に、日照下において放射冷却コンデンサによる凝縮水回収を行う試験を実施し、その性能を評価した。取得した温度データに加えて日射量や風速などの気象条件を考慮し、放射冷却による放熱量を推算することにより、本研究で作製した放射冷却コンデンサの放熱機能を実証した。さらに、凝縮水回収を固体表面上で制御する手法として、親水性ナノ粒子コーティングを用いたパッシブな水輸送の基礎技術を構築した。 以上より、本研究で提案した放射冷却コンデンサについて、その応用に必要な各種の要素技術を提示することができた。また、各技術のさらなる展開へ向けた指針を得ることができた。
|