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2020 年度 実施状況報告書

鉱物廃材の再資源化を指向した銅還元細菌の育種と銅還元機構の分子生物学的解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K05407
研究機関名城大学

研究代表者

細田 晃文  名城大学, 農学部, 准教授 (50434618)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード銅イオン還元 / 嫌気性細菌 / Shewanella科 / 次世代シークエンス / 酸化銅
研究実績の概要

本年度の研究では,申請者が構築した嫌気性銅還元マイクロコズムは河川汽水域底泥を接種源とし,銅板を入れた培養物を調製しバイアル瓶(2連×2×4処理区)のヘッドスペースを窒素ガスで置換した後,25℃にて静置培養した。ネオキュプロイン法による銅(II)イオンの定量およびサイバーグリーン染色による菌数測定を各培養物に対して行い,銅イオンが減少した培養物のDNA抽出,16S rRNA遺伝子(V4領域:古細菌および細菌を標的)のPCRおよび次世代シークエンス解析を行った.滅菌処理を施していない4つの培養物(培養60日)における菌数は,それぞれ3.6~4.5×10^6 cells/mlまで増加し,銅板の周辺に沈殿物を生じた.この時の銅イオン濃度は約0.9 mMの減少であった.次世代シークエンス解析の結果,1つの培養物当たり約62,000リードの配列情報(銅イオンの変化が生じた6つの培養物からの平均値)が得られ,Desulfobulbus科(5.06%),Desulfomonas科(8.24%),Pelobacter科(4.05%),Alteromonas科(24.1%),Clostridium科(7.08%)などが優占化している(存在比3%以上)ことが分かった.一方,嫌気培養で優占化されやすいと考えられるメタン生成アーキアなどは存在比1%には満たなかった(Methanosarcina科:0.29%)また,ある培養物では,金属の還元能を有するRhodocyclas科(26.5%)や電流生産菌としてよく知られているShewanella科(45.5%)のみが優占化していた.また,培養中に生じた沈殿物をX線回折により解析した結果,酸化銅(CuO)であることが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画に従って,銅還元ができる嫌気性細菌の集積培養物(マイクロコズム)を得た.銅還元能力は1 mM程度と低いが銅還元マイクロコズムにおいて,16S rRNA遺伝子を標的とした細菌群集解析を行った結果から,Alteromonas科,Rhodocyclas科およびShewanella科に属する細菌の優占化が確認された.これらの科に属する細菌には,鉄などをはじめとするいくつかの金属を還元する細菌が属するという報告があることから,培養物中の銅イオンの還元に関与していると推察された.また,銅イオン還元が認められた培養物中にのみ生成した沈殿物のX線回折結果から酸化銅が生成したことが明らかになったが,この生成反応が生物的あるいは非生物的であったかについては,明確な判断ができなかった.計画ではUNSWのMichael Manefield教授とデータ解析を行うため渡豪を予定していたが,コロナ禍のためオンラインでのミーティングにより結果に対する意見交換を行った.以上の結果より,本研究は概ね順調に進展していると判断した.

今後の研究の推進方策

次年度は,次世代シークエンス解析によって優占化していると考えられるAlteromonas科,Rhodocyclas科およびShewanella科のうち金属の還元能を有する細菌種の情報を検索し,それに基づいた各細菌種の最適培地を用い1 mMよりも高い銅イオン濃度にて,マイクロコズムの継代培養(馴養)を行う.同時にこれまでに得られた培養物における銅還元および生成した酸化銅の沈殿物が生物的反応によるものであることを証明するための培養実験(殺菌した接種源による培養など)も行う.これらの実験により銅還元細菌の単離を目指す.

次年度使用額が生じた理由

2020年度の4月から8月頃まで本学の入構制限があり,研究データ(次世代シークエンス解析)を得るための外部委託などができない状況が続いたため,当初予定していた研究進捗に若干の遅れが生じ,研究費用を当該年度内で使えなかった.この研究費については,次年度の次世代シークエンス解析または,培養物に生じた沈殿物のより詳細な解析を外部委託するために用いる予定である.

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公開日: 2021-12-27  

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