研究実績の概要 |
本年度の研究では,ここまで申請者が構築した嫌気性銅還元マイクロコズム(河川汽水域底泥が接種源)の継代培養を続け,銅還元が起こる嫌気性細菌の増殖を確認していた.しかしその後,細菌活性が急激に低下し,銅還元細菌(群)の死滅が推察された.そこで,これまで同時並行で培養していた海洋底泥由来の嫌気性銅還元マイクロコズムの継代および菌叢解析を続け,銅還元ができる嫌気性細菌の分離を目指した.この培養物では培養8日間で銅イオンを還元(約0.5 mM)し,再現性のある銅イオン還元能を示した.この時の培養物からDNAを抽出,次世代シークエンス解析(16S rRNA遺伝子)を行った結果,Pseudomonas科の細菌が優占化していることが分かった.またこの培養中の銅還元培養物について硫化銅(Cu2S)を含む培地にて継代したところ,培養に伴って生じる銅イオンが還元されるという結果を得た.NGS解析から,優占した細菌種(P. pseudoalcaligenes)においては,2価銅吸着など銅還元に関与する報告(S. Singh et al. 3 Biotech, 7, 2017, doi:10.1016/j.envpol.2009.04.004)があることなどから,銅イオンを電子受容体として優占化していることが示唆された.また,これまでと今年度のNGS解析結果比較,銅イオンへの耐性や還元能において大きな違い(銅還元能;河川底泥:1.5 mM,海洋底泥:0.5 mM)があったことから優占化した細菌種が異なっていることを明らかにし,安定的に継代培養を行うためには,培養条件を早急に決定することが重要であることが分かった.さらに,培養物中の銅還元細菌種により銅リサイクルの実用化を目指した場合,銅イオンを含む低品位銅鉱物の濃度(5000 ppm)よりも低濃度の銅イオンでしかリサイクルできないことが課題となった.
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