太陽電池の開発においては、太陽光のもつエネルギーを有効に活用できることが重要である。既存のシリコン太陽電池においては、1100 nmの光のエネルギーは有効に活用されているが、それより短波長の光においては、光のエネルギーの一部が熱となり電気的なエネルギーに変換されずに放出されている。このようなエネルギーを有効活用できれば、太陽電池の効率の向上が期待される。 シングレットフィッション(励起子分裂)とは、一つの光励起状態(一重項)から二つの光励起状態(三重項)が生成する現象のことである。この励起子分裂を利用すると、太陽電池の効率を向上させることが可能である。 このような励起子分裂の最適化するためには、その機構を明らかにすることが重要である。実際の有機デバイスにおいては、デバイスの効率化のためにデバイスサイズがナノメートルオーダーとなっていることが多い。そこで本研究では、ナノメートルサイズの有機固体において励起子分裂過程がどのように進行するのかを明らかとすることを目的とした。再沈法により、ルブレンおよびジフェニルヘキサトリエンのナノ粒子を作成した。磁場下での蛍光測定から有機ナノ粒子中での励起子分裂過程を観測することに成功した。さまざまな結晶系のサンプルを作製し、ナノサイズとなることが励起子分裂にどのように影響をあたえるのかを検討した。作製した数百ナノサイズの微粒子において、格子欠陥が増えることにより励起子分裂が阻害されること、および励起子分裂は微粒子のサイズの効果よりも結晶相の影響を大きく受けることを明らかにした。
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