研究課題/領域番号 |
20K05421
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
坂本 章 青山学院大学, 理工学部, 教授 (90262146)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 赤外光誘起 / 共役ラジカルイオン二量体 / 電子-分子振動相互作用 / 電荷移動 / 赤外吸収スペクトル / 時間分解分光 |
研究実績の概要 |
本研究では,共役ラジカルイオン二量体分子系を対象に,巨大な強度をもつ分子間での電荷移動を誘起する分子振動モードを特定し,これをモード選択的にピコ秒パルス赤外光で励起することで,2つの共役分子間での電荷移動の誘起と制御を行う.さらに,パルス赤外光で誘起した電荷移動をピコ秒時間分解分光測定によっても追跡し,振動励起するモードごとに電荷移動の効率とダイナミクスの違いを解明する.令和2年度には,主に,以下の3つの研究を行った. (1) 共役二量体分子の合成:2つの共役分子(ビフェニル)をアルキル鎖で連結した共役二量体分子[3,3](4,4’)ビフェニロファン(BPP)を,既報よりも高い収率で合成した.BPPの一電子還元により発生するラジカルアニオンでは,ビフェニル部の中だけでなく2つのビフェニル部の間で電荷のやり取りを誘起する振動モードの赤外吸収強度が増大することを,DFT計算によって明らかにした. (2) 光応答性金属錯体の光誘起準安定状態の同定と超高速ダイナミクスの解明:光照射によって分極やスピン,プロトン移動などを複合的に制御できる光応答性金属錯体の光誘起準安定状態を同定し,その生成ダイナミクスを分析した. (3) フォトクロミック分子の超高速ダイナミクスの解明:光照射によって分子構造が変化し,吸収スペクトルの異なる2つの異性体を可逆的に生成するフォトクロミック分子を対象に時間分解赤外分光測定を行い,その構造変化ダイナミクスを分析した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「5. 研究実績の概要」に記述したように,令和2年度には,本研究の目的と関連する3つの研究を実施した.本研究はおおむね順調に進展していると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度以降には,以下の研究を実施する予定である. (1) ラジカルイオン二量体における分子間電荷移動を誘起する振動モードの特定と解析 (2) ラジカルイオン二量体における赤外光誘起電荷移動の制御
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:共役二量体分子の合成に想定以上の時間がかかったこと,測定に必要不可欠なグローブボックスにしばらく不具合があったために,共役二量体分子のラジカルイオンなどの赤外吸収スペクトルの測定と解析が十分にはできなかった.そこで,研究費を次年度に繰越して,当初の研究目的を達成することを計画した. 使用計画:すでに上記の問題は解決しているため,共役二量体分子のラジカルイオンの精密な赤外吸収測定と解析に取り組む予定である.
|