研究課題
本研究では,共役ラジカルイオン二量体分子系を対象に,大きな強度をもつ分子間での電荷移動を誘起する分子振動モードを特定し,これをモード選択的に励起することで,2つの共役分子間での電荷移動の誘起と制御を行うことを目的とした.令和4年度には,主に,以下の3つの研究を行った.(1) 最も代表的な共役高分子であるポリアセチレン(トランス型およびシス型)とそのオリゴマー(トランス型およびシス型のオリゴエン)の分子構造,赤外・ラマンスペクトル,電子励起エネルギーなどを,密度汎関数法を用いて計算し,それらの鎖長依存性からポリアセチレンの赤外・ラマンスペクトルの帰属を再検討するとともに,トランス-ポリアセチレンのラマン励起波長依存性も再検討し,その起源も明らかにした.(2) 光励起により着色した開環異性体を発生するフォトクロミック錯体の超高速時間分解赤外スペクトルを測定し,着色した開環異性体のC=O伸縮振動数から開環異性体が有するジラジカル性を評価にした.(3) 光応答性のFe(II)SCO錯体の極低温光照射赤外分光測定を行い,この錯体に特徴的な光誘起スピン転移にともなう持続的な分極変化の起源を明らかにした.期間全体としては,上述の成果の他に,共役二量体分子の合成とその複数のアニオン種の振動分光分析,光応答性金属錯体の光誘起準安定状態の同定と超高速ダイナミクスの解明,フォトクロミック分子の超高速ダイナミクスの解明,ベンゼンの対称性と呼吸振動などを行った.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (12件)
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