研究課題/領域番号 |
20K05426
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
中西 隆造 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 主任研究員 (70447324)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レーザー還元微粒子化 / エネルギー分散型XAFS / MRCI計算 |
研究実績の概要 |
本年度は,時間分解エネルギー分散型 XAFS(時間分解DXAFS)を用いたロジウムイオンの光還元反応の追跡,金イオンの光還元反応の追跡,および量子化学計算によるパラジウムイオン光還元反応中間体の電子・幾何構造の解明に取り組んだ。時間分解DXAFSはSPring8放射光施設のビームラインにナノ秒パルスレーザーなどの光学系を設置して実施した。ロジウムイオンの光還元では,塩化ロジウム水溶液に266 nmレーザー光を照射し,Rh K-edge 近傍のXAFS測定で反応を追跡した。得られたXANESスペクトルの経時変化を交互最小自乗法による多変量スペクトル分解(MCR-ALS)で解析することで反応モデルを構築した。その結果,中間体としてRh(I)を経由していること,Rh(I)は光酸化も起こしていて還元速度が抑制されることが明らかとなった。金イオンの光還元では,塩化金酸水溶液に355 nmレーザー光を照射して反応を開始し,Au L3-edge近傍の XAFS測定で反応を追跡した。また,白色ランプ光を用いて光吸収スペクトルの経時変化も同時にモニターした。測定はレーザー光照射用の石英窓とX線照射用のカプトン窓が設けられた組み立てセルを新たに作製して用いた。光吸収スペクトルに金ナノ粒子生成による表面プラズモン共鳴バンドが発現するのと同期してXANES領域に特異的な変化が見られており,新たな反応過程を示唆する結果を得た。量子化学計算では、パラジウムイオン[PdCl4]2-の光還元反応中間体の候補である[PdCl2]-イオンについての構造最適化と電子状態計算をMRCIレベルで行い,直線型の分子負イオンとして安定に存在できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に沿って時間分解DXAFS測定を塩化ロジウム酸水溶液と塩化金酸水溶液に適用し,それぞれのレーザー光還元反応に関する知見を得る事ができた。また塩化パラジウムイオンの量子化学計算を昨年度からさらに推し進め,還元反応中間体として有力な分子負イオンを明らかにした。ロジウムとパラジウムの結果についてはそれぞれ原著論文として発表した。以上のことから,本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,塩化金イオン反応の時間分解DXAFSデータの解析を進めるとともに,反応条件や添加試薬を変えた測定を行い,還元過程の解明に取り組む。また,これまで対象にした金属イオン種の反応についてフェムト秒過渡吸収の測定を進め,初期ダイナミクスの知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会がオンライン開催となったことで旅費が不要であったこと,物品・試薬の購入による支出が予定よりも少額であったことから次年度使用額が生じた。翌年度分の旅費・消耗品費として使用する計画である。
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