研究実績の概要 |
本研究では二酸化窒素分子の波長400nmのフェムト秒レーザー光照射により生成した光励起分子に波長1450,1650,1750nmの高強度赤外レーザーパルスを集光し、トンネルイオン化により放出された光電子の再散乱電子スペクトルの励起光の偏光角依存性を測定した。測定自体はできたが、この波長では再衝突のエネルギーが十数eVと低く、電子波の波長が分子内の原子間距離より遙かに大きいため電子回折の信号は測定できていない。再衝突電子のエネルギーを上げるためには赤外パルスの強度を上げるか波長を長くするがする必要があるが、光励起分子はイオン化エネルギーが小さくなるため、現在の強度でも集光点の励起分子のほとんどがイオン化されるデプレッションの影響で集光点から離れた位置でのより弱い強度でのイオン化が支配的になり、実効的な光強度をこれ以上上げるのは難しい。従って今後はより長波長および短パルスの赤外レーザーによるイオン化を利用することでイオン化される分子の数を減らす工夫が必要となる。また、本年度には光励起後の分子回転による分子配向のランダム化の影響について考察し、現在の実験条件下では光励起後2-300フェムト秒以上の遅延時間での測定では分子回転によるデコヒーレンスの影響が無視できないのでそれより短い遅延時間での測定が必要であることを確認した。またイオン化がもう一つのターゲットである強光子場中で整列した分子の電子回折実験は3年目以降で行う予定で準備していたが2年目の途中で中断したため実験を行うまでに至っていない。
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